マンション業界の重要課題「建築費高騰」
マンション原価の上昇が叫ばれて久しい。昨今は、競り上がりの激しい用地代よりも「建物原価(建設費)高騰が深刻」といわれる。建設業界団体のデータによれば、2011年3月時点を100とした場合、2013年9月がおよそ108。つまり、8%近く上昇していることになるのだが、大手マンションデベロッパー野村不動産曰く、「*実感としてはそれ以上。当社の発注ベース(実績)で計算してみると23%も上がっていた」(中井加明三社長)。*2013年11月時点同社は、2013年4月に「建設企画室」を設置。建設各社との関係強化、予算精度の向上、バルク調達などを統率し、建物原価の10%(販売価格で200万円相当)削減を目指している。
地価上昇は都心部が顕著であるのに対し、建築費高騰は全現場に共通する問題。なかでも建物原価の比率が高い(=都心よりも相対的に土地代が低い)郊外や地方都市は深刻だ。首都圏全域、全国主要都市で事業を展開するデベロッパーにとっては、重要であるのはもちろんのこと、それが2020年東京五輪や都心部における大型再開発に起因するものとなれば、問題の長期化が容易に想定できることから対処は不可避である。
三菱地所レジデンス「マンションPCシリーズ化工法」
この状況を打破するために、三菱地所レジデンスと木内建設はPC(プレキャストコンクリート)工法を中小規模物件でも導入できるしくみ作り(シリーズ化)を開発した。マンションデベロッパーがゼネコンの施工工程に踏み込んで設計まで含めた新しいサプライチェーンを再構築した点が新しく、「技術の三菱」らしさを発揮した取り組みといえる。通常、(大規模マンションを除くほとんどの現場では)1階から順に、鉄筋と型枠を組み、そこにコンクリートを流し込み、固まったら次の階に取り掛かる。一方、あらかじめ専用の工場で製作したコンクリート部材を現場に運び込んで組み立てるのがPC(プレキャストコンクリート)工法である。
PC工法の利点としては、品質の均一性を高めやすいこと、現場作業の省力化、工事工程の短縮化・合理化などが挙げられる。逆に、不利な点は運搬コストがかかることや複雑な接合部が発生すること。したがって、スケールメリットの生じる分野が超高層建築物などに限られていた。
「柱・梁等部材の規格化」により3か月工期短縮、1,500人工削減
「マンションPC(プレキャストコンクリート)シリーズ化工法」では、耐震壁を設けず、柱と梁で構成する純ラーメン構造を採用。両開口部間に中間柱を設ける(下図「間取り」参照)ことで耐震性を高めるとともに、柱と梁の寸法を一定にすることができた。これにより、接合作業が単純化され、部材も共通化できるため、設計・施工両段階での大幅な工期短縮、製造コストの低減化が容易になった。シリーズ第一弾となる「ザ・パークハウス南行徳」では同工法の採用により、設計期間で約1.5ヵ月、施工期間で約3ヵ月、延1,500人工*の削減ができる見込みだという。*作業量を表す。労働者一人/日の労働量を元に算出。
「ザ・パークハウス南行徳」は、東京メトロ東西線「南行徳」駅から徒歩9分。地上7階建てと同5階建て、総戸数60戸の分譲マンションである。専有面積は64.15平米~80.37平米。間取りは2LDK~3LDK。2015年8月下旬入居予定。
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