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2014凱旋門賞の日本馬たち~親子が紡ぐ物語~(2ページ目)

日本時間の10月5日(日)、世界最高峰の一つとされるG1凱旋門賞がフランスで行われます。今年、日本からは3頭が挑戦。悲願のタイトルを目指す日本馬たちについて、その父も交えながら紹介します。

河合 力

執筆者:河合 力

競馬ガイド



驚異の成長力を見せた父ハーツクライ
その遺伝子を受け継いだ「ジャスタウェイ」

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一気の成長で世界に挑むジャスタウェイ(写真 JRA)

ディープインパクトがレースで負けたのは、生涯14戦のうち2度だけ。1度は先述した2006年の凱旋門賞で、これは外国馬が相手でした。そしてもう1度は、その前年。2005年のG1有馬記念(芝2500m、中山競馬場)。この時ディープインパクトを2着に負かしたのは、ハーツクライ。今年の凱旋門賞に出走するジャスタウェイの父でした。

ディープインパクトが生涯で初めて負けた2005年の有馬記念。殊勲の白星を挙げたハーツクライは、実はこの時初めてG1を勝ったのでした。それまで2着はあったものの、G1勝利は初めて。当時は、ディープインパクトの敗戦ばかりに目が行き、ハーツクライ自身はそこまでピックアップされなかったといえます。

2005年有馬記念のレース映像(ハーツクライは黄帽の10番)
※リンク先の「HIGH」か「LOW」ボタンを押すと映像が流れます

しかしどうでしょう。その後のハーツクライはすごかった。翌2006年3月には、ドバイの国際G1であるドバイシーマクラシック(芝2400m、ナドアルシバ競馬場)を圧勝。さらに7月には、イギリスの伝統G1、キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝2400m、アスコット競馬場)でも大接戦の3着となったのです。つまり、あの有馬記念を機に、ハーツクライは劇的な成長を遂げていたのでした。

そんな父の「急激な成長力」が、子に受け継がれているから面白いもの。凱旋門賞に挑戦するジャスタウェイは、2013年の秋までG2やG3のレースで苦戦していた存在。それが、昨年10月のG1天皇賞・秋(芝2000m、東京競馬場)をいきなり圧勝すると、大変身してしまったのです。

2013天皇賞・秋のレース映像(ジャスタウェイは青帽の7番)

こういうレースのあと、競馬ファンはこんな討論をします。「あのジャスタウェイの勝利は本物なのかどうか」と。つまり、展開に恵まれたフロックなのではないか。あるいは、一回だけの偶然だったのではないか、と。

しかし、ジャスタウェイがたどった道のりは、父と同じでした。今年3月、ジャスタウェイはドバイの国際G1、ドバイデューティフリー(芝1800m、メイダン競馬場)を圧勝。日本に戻ると、6月のG1安田記念(芝1600m、東京競馬場)も絶望的な展開から見事に勝利。父と同じく、驚異的な成長力を見せたのです。

凱旋門賞で不安があるとすれば、2400mという距離。今まで2000m以下のレースで結果を出しているジャスタウェイにとって、2400mは得意とは言えません。しかし、父譲りの「成長力」を考えれば、過去の実績は通用しないのかも。そういう意味で、期待は高まります。

海外大好きステイゴールドが送り込む
日本を代表する個性派「ゴールドシップ」

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父に負けず劣らずの個性派ゴールドシップ(写真 JRA)

1996年~2001年まで現役生活を送った、ゴールドシップの父ステイゴールド。同馬はなかなか勝ちきれないものの、多くのG1レースで2・3着になったことから「善戦マン」と呼ばれました。

「善戦マン」というと、どんなレースでもひたむきに頑張る馬を思い浮かべるはず。しかし、ステイゴールドはそうではありません。レースに行けば隣りの馬を噛もうとしたり、コースと逆の方向に行こうとしたり……。当時のスタッフは「いつでも楽をする機会をうかがっていた」というほど。

つまりはかなりのクセ者なわけで、2・3着が多かったのも、いつも全力を振り絞った結果ではなく、むしろその気難しい性格が勝利を遠ざけていたのだとさえ思っています。

G1ではどうしても勝利に届かない馬。そんなステイゴールドでしたが、なぜか海外に行くと物凄いパフォーマンスを見せたのでした。

ステイゴールドが海外のレースに挑んだのは、生涯で2度。そしてその2回とも勝利しています。1度目は、やはりドバイの地で、当時「世界最強」といわれたファンタスティックライトに勝利。そして2度目は、引退戦として臨んだG1香港ヴァーズ(芝2400m、シャティン競馬場)。絶望的ともいえる差を一気に詰め、引退戦で念願のG1タイトルを獲得したのでした。

ステイゴールドの成績-JRA

なぜ海外ではあれほど走ったのか。そればかりは分かりません。しかしステイゴールドの「海外好き」な遺伝子は、きちんと子に受け継がれています。たとえば冒頭のエルコンドルパサー以降、日本馬が凱旋門賞で2着になったことは3度ありますが、そのすべてがステイゴールドの子どもなのです。となると、ゴールドシップに期待してしまうのも当然でしょう。

なおステイゴールドは、みずからのクセ者ぶりも余すことなく子どもに伝えています。ゴールドシップはまさにその代表で、すでにG1を5勝もしていますが、大敗を喫することもしばしば。スタートからしばらくはやる気を出さず遅れるのが定番ですし、熟練のスタッフでも「難しい」といわせるほどの気分屋です。

2014宝塚記念のレース映像(ゴールドシップはピンク帽の11番)

ただし、ゴールドシップがマジメに走ったときの強さは誰もが知っています。そしてそのマジメさは、父と同じく「海外」でこそ発揮されるのかもしれません。

ちなみにゴールドシップは、今回が初の海外。海外好きな父の血を継承していれば、北海道・日高生まれの問題児が世界を獲ってもおかしくないでしょう。

いずれも現役時代の父をダブらせる、日本馬3頭。そんな愛すべき馬たちが、フランスの地で健闘してくれることを祈ります。勝つことは決して簡単ではありません。それぞれの「らしさ」を発揮してくれれば満足です。

凱旋門賞の模様は、当日23時15分からフジテレビ系列で生中継の予定。3頭の戦いを、みんなで見守りましょう!

(リンク)
2014凱旋門賞特設サイト|JRAウェブサイト×レーシングビュアー
ハープスター|競走馬データ‐netkeiba.com
ジャスタウェイ|競走馬データ‐netkeiba.com
ゴールドシップ|競走馬データ‐netkeiba.com


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