オーストリア・ウィーン歴史地区のカフェ、老舗の椅子の風景がある
どこにいても、「何気なくある椅子」が気になる。そして、その場所、空間の一部になりきっている風景がそこにある。
大好きで18年も通い続けているオーストリア・ウィーン。
ウィーンと聞くだけで、身体がリズムする。
ウィーンは音楽の都、と言われるが、音楽だけではない。絵画、建築、デザイン、工芸、料理・・とにかくクリエイティブな街なのだ。
特に世紀末芸術が今も存在し、どこかの国のように飾り物ではなく、実用しているところが素晴らしい。
音楽は、国立オペラ座、庶民のフォルクスオーパー、毎年世界放送されるニューイヤーコンサートで有名な楽友協会等。
建築では街のいたるところで見かけるオットーワーグナー、ロース、ホライン、フンデルトヴァッサー等の建築物。
デザインでは、様々なショップやミュージアムで楽しめる・・・友人のロバート・ラ・ロッシュ氏のメガネは、今ヴィンテージもので流行っている・・・等々。
そして、カフェ。
カフェ文化の発祥は、ここウィーン。ウィーンのカフェ文化は2011年にユネスコ世界遺産に指定されている。
時間濃度の高い琥珀色の空間で過ごす時間は、至福の時。
カフェ・ムゼーム、カフェ・ラントマン、カフェ・モーツァルト、パルメンハス・・・等、有名な老舗が今も流行っている。中でもカフェ・ツェントラルが、気に入りの一つ。
ウィーン旧市街のド真中、ケルントナー通りのユリウスマインル(高級スーパー)の脇をショッテントーアに向かいながら歩くこと5~6分。
二股に分かれる道の突端にカフェがある。
PATISSERIE、RESTARNTの立看板を両脇に掲げるエントランスのくぐると琥珀色の空間が広がる。
全ては琥珀色の中にある
ウェーターに指定されたテーブル、椅子に座って店内を見渡す。ベージュのアーチ天井を支える大理石の丸柱、天井から下がる鋳物アームに点在するガラスのライト。天井近くまで半円を描く窓にはゆったりとした淡黄色のドレイプ、そして可愛らしいカフェカーテン。
その窓辺で寛ぐ人々の様は、まるでオランダ画家:フェルメールが描く絵画のように陰影が織りなして美しい。こういうなにげない風景に気づき眺めている、それが至福の時なのだ。ありふれた日常の風景こそ美しく、その気づきほど貴重なものはない。
まっ、ここがウィーンということもあるが・・・。
モザイク張りのフローリング床に、ちょこんと脚を添える柔らかいラインのトーネットの椅子。
カフェでの定番椅子といえば、トーネットの曲げ木の椅子。みなさんもご覧んになったことはあるにちがいない。世界中で愛用されている定番中の定番なのだ。
トーネットは、ここウィーンの家具メーカー。19世紀末にミファイル/トーネット兄弟が木を曲げる技術を考案し曲げ木による椅子を世に送り出した。世界中に輸出できるよう椅子を部品化し、届いた先々で組立てるいわゆるノックダウン(組立)式椅子をデザインした。
店内の椅子は、ダークブラウン色の細く優美な曲線を描き、エンジ色にからまるツタ模様の布地の座や背が上品に添えられている。
椅子同様に琥珀色の飲物とお菓子が絶品!