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ウォッチ型端末でアップルは新機軸を打ち出せるか?(3ページ目)

アップルコンピュータの新型iPhoneには、発売前から今回も長蛇の列が出来た。これを見る限りアップル人気は健在だが、一方で慎重に見極めたい展開もある。すでに発表された腕時計型の端末「アップルウォッチ」だ。腕時計型端末は「苦しい時の腕時計型」とも言われ、AVあるいはIT企業にとってアイデアが枯れた時に苦し紛れに出されてきた面もあるからだ。果たしてアップルは新機軸を打ち出せるのか?

松井 政就

執筆者:松井 政就

社会ニュースガイド

技術や用途の押し売りをしないのがアップル

そうした技術優先ではなく、用途優先、実用性優先で時代を変えてきたのがアップルだった。

80年代までパーソナルコンピュータと言えば、まるで呪文のような「コマンド」を打ち込む難解な道具だった。そんな時代に、あらかじめ用意されたメニューから操作内容を選ぶ画期的な「マッキントッシュ」を発売したのがスティーブ・ジョブズ率いるアップルだった。

アップルの商品はどんな高度な技術も黒子(くろこ)化して背後に隠れ、ユーザーには簡単で必然性のある用途を提供するものだった。

ジョブズ無き谷間の時代を経たのち、ジョブズの復帰とともにiPodそしてiPhoneを発売し、ユーザーに無理のない必然性ある用途を与えてきたのはご存じの通りだ。

そんなアップルがあえて、腕時計型端末という難関なカテゴリーに踏み出した真意はどこにあるのか。


アップルの真意は何か?

ぼく自身、熱烈なアップルファンなので、どうしてもひいき目に見てしまう傾向があるが、それでもなお、今回のアップルウォッチには、まだアップルらしさを感じ取ることができていない。

特にデザイン面だ。アップルは、小さなディスプレイ+操作パネルだった初代iPodを、現在の全面ディスプレイにしたノウハウをもつ。

そのノウハウがあればアップルウォッチを全ての面がディスプレイのリング状とすることくらいは可能なように思えるが、それにチャレンジした痕跡は見られない。


アイデアの壁か、それとも新時代の前兆なのか

これまでにも数多くの常識を覆してきたアップルなら、腕時計型情報端末をうまく料理してくれるのではないかという期待もある。もしかしたらそのヒントは先日発表されたApple Pay(アップルペイ)にあるのかもしれない。

アップルではNFC技術による決済システムを導入し、iPhone6、6 plusから使用可能になるとのことだが、その技術とアップルウォッチを組み合わせることで、(無線の到達距離はともかく)たとえば高速道路のETCのように、アップルウォッチを装着している人のみが利便性の高いサービスを受けられる仕組みを作るのは可能だろう。

たとえば空港をチケットレスにし、しかも搭乗予定者が空港のどこにいるかを追跡できるサービスなど、様々な形に発展できるだろう。もちろん鉄道の駅でも可能だろうし、子供に装着させ、迷子の防止にも活用できるかもしれない。

これらはぼくの凡庸な想像力によるもので、アップルが何を考えているかは不明だが、全く新しいジャンルで新機軸を打ち出せたなら、その分野の勢力図が塗り替えられる可能性もある。
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