ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

Creators Vol.3 『女神様が見ている』の若き作者たち

50年代の朝鮮戦争を舞台に、無人島に打ち上げられた南北軍人たちの人間ドラマを描き、昨年の初演から大評判をとっている『女神様が見ている』が来日中です。本作で一躍脚光を浴びた脚本家、演出家、作曲家は、どんな過程を経て本作を練り上げていったのでしょうか。現在の韓国創作ミュージカルの勢いを象徴する、夢と希望に満ちた若い才能たちの声をお届けします!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

『女神様が見ている』(C)アミューズ2014

『女神様が見ている』(C)アミューズ2014

時は1952年。捕虜を移送していた韓国軍船が嵐に遭い、韓国軍2名、北朝鮮人民軍4名の兵士たちが無人島に辿りつく。故障した船を修理できるのは人民軍のリュ・スンホのみだが、彼は戦争の悲惨さを目の当たりにして、頭がおかしくなってしまったらしい。ささいなことにおびえ、悪夢にうなされるスンホに、韓国軍のヨンボムが作り話をしてなだめる。
「この島には美しい女神様がいて、僕らのことを見まもっていてくれるから大丈夫」。
意外にもスンホはこの話に食いつき、いそいそと女神様のために花を集め出す。島から脱出するため、南北の兵士は心ならずも協力しあい、「女神様のいる世界」を作りあげてゆくのだが……。
『女神様が見ている』(C)アミューズ2014

『女神様が見ている』(C)アミューズ2014

朝鮮戦争という重いテーマを扱いながらも、兵士たちの人間性を少しずつ露わにし、笑いや涙も巧みに織り込んだ脚本を、親しみやすい音楽と緩急を心得た演出で立体化したミュージカル『女神様が見ている』。隙が無く、よく練り上げられた舞台は2時間休憩なしの上演時間中、片時も目が離せず、13年の初演から大好評を得ましたが、そのクリエイターたちはほぼ無名の新人。彼らがなぜ実質的なデビュー作で成功することができたのか、その創作過程をじっくりとうかがいました。


ミュージカルの創作コンペを通して練り上げられた舞台

――この作品は韓国のミュージカル・コンペティション出身とうかがっています。どのような過程で作られていったのでしょうか?

(左から)脚本家ハン・ジョンソクさん、演出家パク・ソヨンさん、作曲家イ・ソンヨンさんundefined(C) Marino Matsushima

(左から)脚本家ハン・ジョンソクさん、演出家パク・ソヨンさん、作曲家イ・ソンヨンさん (C) Marino Matsushima

ハン・ジョンソク(脚本家、以下ジョンソク)「最初に私がストーリーを考えたのは7年前なのですが、まだ当時はミュージカル作家としての力量が十分ではありませんでした。ミュージカル・アカデミー(専門学校)での勉強を通してある程度力が蓄えられたと思えた頃、作曲のソンヨンさんと出会ったのです。二人で作品の原型にとりかかり、1時間10分ぐらいの作品に仕上がった頃、(韓国の大手製作会社である)CJが主催のCreative Mindsというコンペティションが創設されました(注・2010年)。いい作品があればショーケースとして試演させてくれるというので応募してみたところ、選んでいただけ、11年の4月にリーディング公演をすることになりました」

パク・ソヨン(演出家、以下ソヨン)「その後、私が参加することになりました。3年前のことです」

ジョンソク「僕ら3人はミュージカル・アカデミーの同級生なんです。僕とソヨンさんが作家コースで、ソンヨンさんが作曲家コースでした。このショーケースの翌年、ソウル・ミュージカル・フェスティバルというコンペがやはり初めて開催され、僕らはそこで優勝することができました。副賞は“フル・ステージ版実現のための1億ウォンの資金、劇場の無料使用、制作会社の紹介”です。僕らはヨヌ舞台という会社を紹介され、舞台版を一緒に作ることになりました」

――創作コンペはどの程度の応募数だったのでしょうか?

イ・ソンヨン(作曲家、以下ソンヨン)「CJのショーケースもフェスティバルも、その時が第一回目だったこともあって、どれくらいの応募数だったかははっきりしません。何百も殺到、と言う感じではなかったのではないかと想像します」

ソヨン「でも、それによってお客様の前で試演するというチャンスをいただけた。これは私たちにとって大きなことでした」

ジョンソク
「2~3年間、2回の試演に備えてブラッシュアップし続けましたのでね。そのおかげで、13年のフル・ステージ版の初演から(完成された作品として)お客様に愛していただけたのではないかと思います」

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