絵本

眠れなくて不安な子どもたちへ『おやすみ ハリー』

なかなか眠れないぬいぐるみのぞうのハリー。何とかして眠れないかと色々やってみればみるほど目はパッチリと冴え、不安ばかりが増して、とても悲しそう。でも大丈夫、ぬいぐるみ仲間のおかげで、穏やかな眠りにつくことができます。なかなか眠れないと思い込んで不安になっているお子さんに、絵本『おやすみ ハリー』で安心感を届けてあげましょう。

執筆者:千葉 美奈子

なかなか眠れないってつらいよね『おやすみ ハリー』

ふんわりとした手触り、毛布のいいにおいまで伝わって来そうな温かなタッチの絵本『おやすみ ハリー』。でも主人公のハリーは、仲間たちがあっという間に眠ってしまった後もずっと、なかなか眠ることができなくてつらそうです。

絵本を読んでも部屋の片づけを始めても、体を動かしてみても、気持ちよさそうにあっという間に眠ってしまったひつじのルルとくまのテッドの表情と対照的に、パッチリと開いてしまったハリーの目。リラックスしようと体を伸ばしたり寝返りを打ってみてもダメ。心配事が次々に浮かんできて頭の中はごちゃごちゃ。悲しげなハリーの様子に、読んでいる方も心配になってきます。疲れているのになかなか眠りに落ちることができないって、子どもでも大人でもとてもつらいんですよね……。何かいい手はないのでしょうか。



ハリーに寄り添う仲間

毛布の中で動き回るハリーの様子に、つぶらな瞳が開いたルルとテッド。この優しい仲間たちがかけてくれた言葉と、してくれたあることによって、ハリーは今までの苦労が嘘のように、眠りの世界に入っていくのです。窓辺に並んで月を見上げる3匹の後姿には、心を打つものがあります。すてきな夢を見ていそうな穏やかな寝顔でスヤスヤ眠るハリー。パステル調でフワフワ、モコモコの毛布の中は、みんなの体温でさぞかし温まっていることでしょう。「ハリーはどうなっちゃうんだろう」とちょっぴり心配しながら読んできたお子さんも、「一緒に仲間入りしたいなあ」という気持ちになりそうですよ。


頑張らずに、力を抜いて

安眠に一番効果があるのは、何と言っても安心感からくるリラックスした状態。どんなに頑張っても眠れなかったハリーが、仲間のおかげでそんな状態に導かれた様子を見ていると、困った時や悲しい時にこんな風に寄り添ってくれる仲間の存在の大きさを感じます。普段の生活の中でも、窮地に陥った時や孤独を感じた時に、そっと寄り添ってくれる友人や家族がいれば、きっと人は皆、立ち直り、前に進むことができるはず。そんなことまで感じてしまうほど、寄り添う3匹の背中、寝顔には、心が癒されます。お子さんのお休み前の1冊として、また、頑張りすぎて少し疲れてしまっている大切な仲間にも届けたい絵本です。
 
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