穏やかな笑顔に満ちた絵本『わたしが あかちゃんだったとき』
我が子が生まれた日のこと、赤ちゃんだった頃のことというのは、何年たってもついこの間のような気持ちもしながら、日々の生活の中ではそう頻繁に思い出すものでもないかもしれません。そして、子どもにとってはそれは、記憶には残っていない日々のことです。絵本『わたしが あかちゃんだったとき』では、3歳になった小さな女の子が小さなベビーウェアを見たことをきっかけに、自分が赤ちゃんだった時のことを次々お母さんに訪ねていきます。登場する女の子も、お母さんもお父さんも、常に穏やかな笑顔と温かい語り口。妊娠中や産後のお母さんを自然にサポートし、赤ちゃんのお世話にも楽しげに取り組んでいるお父さんの表情もすてきです。子育てには笑顔だけじゃない場面もたくさんありますが、やはり赤ちゃんを迎えること、子どもの成長を感じることは穏やかな喜びに包まれていることを、絵本全体がメッセージとして発しています。
子どもは思い出話が大好き!
おしゃべりが達者になってきた小さな子から、もっともっと大きな子まで、子どもは自分が「あかちゃんだったとき」の話を聞くのが大好き! こんなに小さかったのかな、おっぱいを飲んでいたころなんてあるんだ、自分が産まれた時に家族みんなはどんな様子だったのかな、赤ちゃんの頃はどんなことをして遊んだのかな、どんなことをしてお母さんやお父さんを驚かせていたのかな、困らせたこともあったのかな……。色々な話を聞くことで、赤ちゃんの時とは違う今の自分に、誇りを感じます。親にとっても、初めて我が子に「あなたが赤ちゃんだった時にはね……」と話すときには、成長の喜びや寂しさなど、色々な感慨深い思いがわき上がるはずです。子どもにそんな話をすることで、親も、日々見落としがちな小さな成長や大きな成長をあらためて感じるかもしれません。子どもはかわいいけれど子育ては大変だなと少し疲れを感じた時にも、癒しをもたらせてくれる絵本でしょう。