働く車たちの1日の終わり『おやすみ、はたらくくるまたち』
クレーン車、ミキサー車、ダンプカー……。広い工事現場で朝から晩まで働く車たち。1~2ページの見開き全体には、5台の工事車両たちが、連携してそれぞれの役割をこなす様子全体が描かれています。ユニークな表情をした車たちによって、どんな風に工事が進んでいるかを見渡せる最初の場面から、子どもたちはワクワクしそうです。1日中働いて疲れ切った体で、夕日で赤々と燃える街の工事現場で今日の最後の仕事をこなす車たち。みんな最後の仕事を無事終えると、そっと目を閉じて眠りに落ちていきます。リズミカルに読むことができる文章に、それぞれの車が眠りに落ちるたびに出てくる「しーっ……おやすみ」のフレーズ。クレーン車がつり下げた星が放つ光が、暗い工事現場をそっと照らしています。パワー全開で働いた車たちの穏やかな寝顔を見ながら、「しーっ……おやすみ」と小さく声に出して繰り返すお子さんたちもいることでしょう。
作者は元気な2児のお母さん
読み手も、1日の疲れが癒されていくような気持ちになるかも……。車たちのまねをして眠るそぶりを見せる子どもたちが、ほどなく本物の眠りにつくときに一緒に寝てしまいたいけれど、大人は子どもたちが眠った後に片付けなければならないことも多々。それでも、何だか疲れが取れるような穏やかな気持ちを導く絵本です。巻末の作者紹介によると、ストーリーの作者は元気な2児のお母さんだそう。トラックが大好きで、寝る前に知っている限りの働く車の名前を挙げてなかなか寝ない次男君を、どうやって穏やかに眠りに導くかを考えたそうです。そして生まれたのが、力強く働いた1日の終わりにエンジンを止めて眠りについていく車たちの様子を親子で語り合い、想像できるようにと願って描かれたこの絵本。だからでしょうか、「色々忙しかったけれど今日も無事終わったー」という大人の心にも寄り添ってくれるように感じるのは。
車たちのもう1つの大きな仕事!
表紙の絵は、たくさんの星がきらめく夜空の下、にっこり微笑むショベルカー。ショベルの中には、穏やかな寝顔のお月さま。お月さまったら、何でこんなところで寝ているのかな? それは、この絵本を見返し(絵本の表紙・裏表紙と中身をつなぐ紙)に描かれた絵まで含めてじっくり味わうと、分かるかもしれませんよ! 車たちは、工事をする以上に大きな仕事をこなしているようです。車大好きだったら2歳前後からお気に入りの1冊になりそうです。そんな小さな子たちが、車たちのもう1つの大きな仕事に気づけるほど成長して一緒に味わえる時がくるのも、楽しみに思えるでしょう。