3歳牝馬たちも、ファイナルラウンドへ向けて始動
皐月賞、日本ダービー、菊花賞と続く「3歳三冠」。3レースとも、オスメスかかわらず出走可能ですが、基本的には牡馬がメイン。一方の3歳牝馬は、同時期に行なわれる「牝馬三冠」を目指します。「牝馬三冠」とは、以下の三つのレースです。--------------------------
4月:G1桜花賞(芝1600m/阪神競馬場)
5月:G1オークス(芝2400m/東京競馬場)
10月:G1秋華賞(芝2000m/京都競馬場)
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施行時期こそ牡馬メインの「3歳三冠」と変わりませんが、レースの距離は異なります。皐月賞(2000m)→日本ダービー(2400m)→菊花賞(3000m)と距離が延びていくのに対し、牝馬三冠はオークスから距離が短くなるのが特徴です。
夏を越した3歳牝馬の多くは、最後の一戦・秋華賞に向け、この9月に始動します。その舞台として選ばれるのが、おもに以下の2レース。
紫苑ステークス(芝2000m/中山競馬場)※2014年は、新潟競馬場で実施
G2ローズステークス(芝1800m/阪神競馬場)
この2レースは「秋華賞トライアル」として、紫苑ステークスは2着まで、ローズステークスは3着までの馬に優先出走権が与えられます。
牝馬は牡馬よりも繊細で、体質面でもデリケートといわれます。不意に調子を崩してしまうことも少なくありません。そして、サラブレッドは基本的に暑さが苦手。そういった中で、3歳牝馬が無事に夏を越せたか、きちんと休養して戻ってこられたかは重要になります。上記の2レースは、それを確認する意味で大切なレースと言えるでしょう。
また、「秋華賞トライアル」でも各陣営のいろいろな思惑が交錯します。そしてそれこそが、レースを見るうえでのポイントとなります。
菊花賞とは違う、秋華賞の特殊性
それを見据えた陣営の「準備」
「牝馬三冠」は、オークス(2400m)から距離が短縮されるのが特徴。そのため、菊花賞のように初体験の距離やペースへの不安はありません。しかし、秋華賞にはそれとは別の難しさがあります。それがコース形態です。秋華賞が行なわれる京都競馬場の芝2000mは、小回りで最後の直線が短いコース。しかも、直線は平坦なため、先行している馬がバテにくい形態と言えるでしょう。したがって、前目のポジションでレースを進める馬が有利。後方に位置し、最後の直線で追い込んでいくタイプの馬には、かなり不利な戦いといえます。
そこで9月の秋華賞トライアル。先ほどの菊花賞トライアルでは、「本番の遅いペースに向けて練習する」という例がありましたが、こちらは逆。後方に控えると苦しくなりがちな秋華賞に向けて、トライアルで積極的なポジション取りを練習する馬がいるのです。
競走馬は前のレースのことをよく覚えているもので、一度スタートから先行する積極的なレース運びをすると、次走ではそれを繰り返そうとすることがあります。これを狙って、秋華賞トライアルで「今までになかった積極的な競馬」を試す形もあるのです。
実際にそれをやったのが、2012年のジェンティルドンナ。桜花賞、オークスと中団からのレースで連勝していた絶対女王は、2012年のローズステークスで、今までにない先行策を試みます。
2012ローズステークスのレース映像(ジェンティルドンナは緑帽の6番)
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いつもと違う形で完勝したジェンティルドンナ。騎乗していた岩田康誠ジョッキーも、「京都内回り2000mは後ろからでは間に合わないケースもあるので、今日のようなレースを教える必要がありました」とコメントした通り、このレースは10月の決戦へ向けた「準備」でした。
そして迎えた2012年の秋華賞。断然1番人気のジェンティルドンナは、途中から一頭がロングスパートをかける展開のなか、見事に勝利を手にします。最後はライバルのヴィルシーナと接戦になりましたが、根性を見せて戴冠。牝馬三冠をすべて制するという、史上4頭目の偉業を達成したのでした。
2012秋華賞のレース映像(ジェンティルドンナはオレンジ帽の14番)
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なお、基本的に秋華賞は先行馬有利ですが、その意識が強く働くために、各馬が積極的に動き過ぎて、後方待機の馬が台頭するケースもあります。このあたりも競馬の面白さと言えるでしょう。
いずれにせよ、三冠最後の戦いへ向けた「準備」を見られるのが9月。陣営たちがどんな考えを持ってトライアルに臨むのか。その思惑を楽しんで頂ければと思います。
※レースの情報は、すべて2014年8月末時点のものです。
(リンク)
9月のレーシングカレンダー|JRAウェブサイト
エピファネイア|競走馬データ‐netkeiba.com
ジェンティルドンナ|競走馬データ‐netkeiba.com