たとえば、喘息発作は夜間に起きやすいし、「寝る子は育つ」と言われるの成長をつかさどる成長ホルモンが深夜1時ごろに最高になることと関連しています。
生物の約1日周期の生理リズムは、概日時計と呼ばれる体内時計によって制御されています。私たち哺乳類の行動リズムは、脳の視床下部に存在する視交叉上核(しこうさじょうかく)という左右一対の神経核で制御され、これが体内時計の司令塔になっています。実は体の全ての細胞に体内時計が組み込まれていて、それぞれの細胞の時間を合わせているのが、視交叉上核の神経核なのです。
この司令塔が両目の網膜から大脳に伸びる視神経の交叉上にあることは、実時間の重要情報である「明るさ」の情報を得やすい場所であることと関係しているかもしれません。
最近では、ヒトの生物時計は数千ルクス以上の明るい光によって調節することができ、照明をタイミングよく使うことによって体内時計を速やかに適切な時間にセットすることが分かっています。
北海道大学においても、明るい光の下での身体運動が、体内時計の調節に有効であることが報告されました。
明るい光を浴びながら運動すると、明るい光だけの場合と比べて、体内時計が目的地の時刻に素早くリセットされたとのことです。明るい光の下での運動は、特に時差ぼけの際の不眠を防ぎ、睡眠の質を維持するのに役立つことも確かめたそうです。
明るい光だけでも、細かなスケジュールを組むことによって時差ボケを減らせることができますが、今回の報告では、そのような手間をかける必要がなく、まず運動すればよいことが示されたそうです。
明るい太陽を浴びて適度な運動することが、一番手っ取り早い時差ボケ解消方法となりそうです。
■参考
- 体内時計にみるシステム生物学 日経サイエンス2007年 7月号
- カルシウムによる体内時計の調節メカニズムの解明 東京大学大学院理学系研究科プレスリリース(2014/5/15)
- 光と運動による生体リズム調節のメカニズム 北海道大学プレスリリース(2014/7/8)