住宅購入の費用・税金/住宅ローンのしくみと選び方

長期金利は一時0.4%台 2015年には反転上昇の可能性

史上最低を続ける日本の金利水準。8月27日には長期金利が0.49%まで低下しました。しかし、米国が今年10月に量的金融緩和政策を終了し、2015年後半には利上げへと金融政策を変更する実現性が高まっています。日本も異次元金融緩和が奏功し、日本銀行は2%の物価安定目標の達成に自信を示しています。緩和的な金融政策がそう遠くないうちに終了する可能性が高まっています。資金計画では金利の反転上昇を意識する必要があります。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


株価ボードイメージ写真

主要先進国では利下げ圧力が強まっている。

日本の長期金利が空前の低水準まで下落しています。今年で69回目の終戦記念日となった8月15日、日本の債券市場では長期金利(新発10年物の国債利回り)が一時0.495%まで下落しました。さらに27日には0.490%まで低下し、低水準を更新する勢いです。国内債券を大量購入して市場金利の低下を促そうという、日本銀行による「量的・質的金融緩和政策」の効果が狙い通りに働いていると考えられます。

こうした金利低下の流れは日本だけの現象ではなく、8月14日(現地時間)には欧州債券市場でドイツの長期金利が初めて1.0%を下回りました(下グラフ参照)。ユーロ圏経済の4~6月実質GDP(域内総生産)が前期比横ばいのゼロ成長にとどまるなか、域内最大の経済国であるドイツの実質GDPがマイナス成長へと暗転したことが市場関係者の心理を冷やしました。

ドイツの長期金利の推移

 

今年6月5日(現地時間)にはECB(欧州中央銀行)が政策金利を史上最低の0.15%にまで引き下げました。ユーロ圏では長期のデフレに陥る懸念が台頭しており、景気回復が依然として脆弱(ぜいじゃく)であるなか、緩和的な金融政策の発動によって需要を喚起し、ユーロ安へと誘導して内需を刺激したい考えです。

政策金利の利下げ合戦には米国と日本も参加しており、米国では2008年10月から、わが国日本でも2010年10月から事実上のゼロ金利政策を導入しています。

かなり専門的な話になってしまいましたが、要は、主要先進国で利下げ圧力が強まっているのです。市場金利と住宅ローン金利には密接な相関関係があるため、特に長期金利が低位安定していれば、住宅ローン金利も低いまま継続され、住宅ローンの利用予定者にとっては好都合に作用します。緩和的な金融政策は、これからマイホームを買おうという人にとってはメリットのほうが大きいわけです。

しかし、世界経済の中心国である米国が、現在、実施している量的金融緩和政策を今秋にも終了することが確実視されています。市場関係者の関心は“その先”にある利上げの時期(タイミング)へと移っています。マイホーム検討者が資金計画を立てる際には、金利上昇を織り込む必要性が高まっています。

米国では2015年後半から金融政策を「引き締め」へと修正の可能性 

日銀の写真

2%の物価安定目標の実現に強気姿勢を示す日本銀行。

その米国では1~3月期こそ寒波の影響でマイナス成長になったものの、雇用関係の改善傾向は続いており、底堅い個人消費を中心に景気は回復基調を維持する見通しです。日本の中央銀行に相当する米国FRB(連邦準備理事会)のイエレン議長は、8月22日(現地時間)に開催された年次経済シンポジウムの講演で「米経済は著しく改善した」「労働市場は予想より早く改善している」との判断を示しました。現在の量的金融緩和政策を早ければ今年10月にも終了することを示唆しています。

こうした流れを受け、マーケットでは“その先”の利上げ時期をめぐる議論が活発化しています。中心シナリオは「2015年後半ごろの利上げ」といった見立てが大勢を占めます。今後の労働市場の改善の程度に応じ、「想定より早まる」ことも「慎重姿勢を取る(利上げの先送り)」こともあり得ますが、いずれにせよ2015年中には高い確率でゼロ金利政策が解除されることは間違いありません。

翻って、わが国日本でも「量的・質的金融緩和政策」の終了時期はそう遠くなさそうです。8月の月例経済報告(内閣府)では「景気は緩やかな回復基調が続いており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動も和らぎつつある」との基調判断を示し、住宅建設については「このところ減少テンポが緩やかになっている」と、7月の景気判断を上昇修正させています。

金融政策の司令塔である日本銀行も、景気の先行きについて「緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。消費者物価の前年比は、しばらくの間、1%台前半で推移するとみられる」としています。

また、「量的・質的金融緩和は所期の効果を発揮しており、日本銀行は2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に維持するために必要な時点まで量的・質的金融緩和を継続する。その際、経済・物価情勢について、上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」と明言しています。

日本銀行の見通し

 

上表は、今年7月に日本銀行が公表した実質GDPと消費者物価指数の見通しです。消費税率引き上げの影響を除いた消費者物価指数は2015年度でプラス1.9%、16年度でプラス2.1%となっており、2年後には目標の2.0%を上回ると予想しています。

民間エコノミストの中には懐疑的として、黒田総裁の強気発言を疑問視する声が少なくありませんが、その一方で現在の異次元緩和をいつまでも継続することにも限界があると思われます。米国が量的金融緩和政策を早ければ今年10月にも終了するように、日本にも必ず終了時期が到来します。空前の低金利にも終止符が打たれるのです。

消費税率が10%へと引き上げられる来年10月(予定)をマイホームの購入リミットと考えている人は、金利の反転上昇を意識した資金計画を心がけてほしいと思います。


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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