主要先進国では利下げ圧力が強まっている。
こうした金利低下の流れは日本だけの現象ではなく、8月14日(現地時間)には欧州債券市場でドイツの長期金利が初めて1.0%を下回りました(下グラフ参照)。ユーロ圏経済の4~6月実質GDP(域内総生産)が前期比横ばいのゼロ成長にとどまるなか、域内最大の経済国であるドイツの実質GDPがマイナス成長へと暗転したことが市場関係者の心理を冷やしました。
政策金利の利下げ合戦には米国と日本も参加しており、米国では2008年10月から、わが国日本でも2010年10月から事実上のゼロ金利政策を導入しています。
かなり専門的な話になってしまいましたが、要は、主要先進国で利下げ圧力が強まっているのです。市場金利と住宅ローン金利には密接な相関関係があるため、特に長期金利が低位安定していれば、住宅ローン金利も低いまま継続され、住宅ローンの利用予定者にとっては好都合に作用します。緩和的な金融政策は、これからマイホームを買おうという人にとってはメリットのほうが大きいわけです。
しかし、世界経済の中心国である米国が、現在、実施している量的金融緩和政策を今秋にも終了することが確実視されています。市場関係者の関心は“その先”にある利上げの時期(タイミング)へと移っています。マイホーム検討者が資金計画を立てる際には、金利上昇を織り込む必要性が高まっています。
米国では2015年後半から金融政策を「引き締め」へと修正の可能性
2%の物価安定目標の実現に強気姿勢を示す日本銀行。
こうした流れを受け、マーケットでは“その先”の利上げ時期をめぐる議論が活発化しています。中心シナリオは「2015年後半ごろの利上げ」といった見立てが大勢を占めます。今後の労働市場の改善の程度に応じ、「想定より早まる」ことも「慎重姿勢を取る(利上げの先送り)」こともあり得ますが、いずれにせよ2015年中には高い確率でゼロ金利政策が解除されることは間違いありません。
翻って、わが国日本でも「量的・質的金融緩和政策」の終了時期はそう遠くなさそうです。8月の月例経済報告(内閣府)では「景気は緩やかな回復基調が続いており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動も和らぎつつある」との基調判断を示し、住宅建設については「このところ減少テンポが緩やかになっている」と、7月の景気判断を上昇修正させています。
金融政策の司令塔である日本銀行も、景気の先行きについて「緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。消費者物価の前年比は、しばらくの間、1%台前半で推移するとみられる」としています。
また、「量的・質的金融緩和は所期の効果を発揮しており、日本銀行は2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に維持するために必要な時点まで量的・質的金融緩和を継続する。その際、経済・物価情勢について、上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」と明言しています。
民間エコノミストの中には懐疑的として、黒田総裁の強気発言を疑問視する声が少なくありませんが、その一方で現在の異次元緩和をいつまでも継続することにも限界があると思われます。米国が量的金融緩和政策を早ければ今年10月にも終了するように、日本にも必ず終了時期が到来します。空前の低金利にも終止符が打たれるのです。
消費税率が10%へと引き上げられる来年10月(予定)をマイホームの購入リミットと考えている人は、金利の反転上昇を意識した資金計画を心がけてほしいと思います。