その4:ちょっとのわかりにくさ(謎解き)と、たくさんのわかりやすさ(物語の流れ)のバランスがスゴイ
2時間ドラマはわかりやすく進行します。事件発生→捜査に定番のシーンが盛り込まれる→予想していなかったことが明るみになる(伏線があったり、犯人と思われていた人が犯人ではなかったり)→どんでん返し(あの人の命が危ない!)→危機一髪(※)→主人公による事件の解説 (集合する)→連行
しかし、すぐに犯人がわかるようでは、途中でチャンネルを変えられてしまいます。かと言って、IT犯罪など専門用語ばかりが並んだり、多すぎる伏線や2重3重のトリックでは主人公が解説しきれません。なにより、視聴者がよくわかりません。
つまり、“ちょっとのわかりにくさ”と“たくさんのわかりやすさ”、この絶妙なバランスが2時間ドラマのスゴイところなのです。
※2時間ドラマにおける“危機一髪”とは
1.名取裕子や片平なぎさが犯人のところに出向き、命を狙われる事態となる
2.実は身近な人が犯人でヒロインが危ない!
などをさします。
その5:『水戸黄門』的、定番シーンがスゴイ
『浅見光彦シリーズ』では冒頭におきまりのシーンが挟まれます。旅先で遭遇した事件に興味を示す光彦が、地元警察に怪しまれ、身元確認をされる――しかし刑事局長、浅見洋一郎の弟ということがわかった途端、地元警察の態度は一変。「浅見先生もお人が悪い」と満面の笑みで頭を下げます。『税務調査官・窓際太郎の事件簿』では、影の査察官窓辺太郎(小林稔侍)が立場を偽り、さえない税務署員として調査を開始します。事件の背後に暗躍する巨悪をあぶり出して大物を対峙するときは、必ず黒の中折帽を被ります。1対1となりシラを切る相手に、「きっちり落とし前つけてもらうぜ」と啖呵を切り、帽子を飛ばし、相手を震え上がらせます。
『タクシードライバーの推理日誌』では、東山刑事(風見しんご)、国代刑事(小林健)、世田谷西署の馬場刑事(正名僕蔵)の3人組が早朝、主人公の夜明日出夫(渡瀬恒彦)宅に勝手に上がり込み、朝ご飯をつくります。事件解決の糸口を得ようとするのです。そして必ず3人でメザシを咥えたまま トホホ臭全開で退散します。
シリーズを愛する視聴者は「きたきたきた……」と含み笑い。この親近感が2時間ドラマのスゴさと言えます。
その6:異動が極端に少ないのがスゴイ
異動が少ないから続くのか、続くから異動できないのか、とにかく2時間ドラマの主人公たちは異動が少ないです。『浅見光彦シリーズ』はすでに50作で「もう刑事ということでいいのでは……」と思ってしまいますし、『十津川警部シリーズ』でも「こんなに事件を解決しているのだから十津川警部はもっと出世していいのでは……」と思うのですが、なかなかそうはいかないようです。『終着駅シリーズ』、『法医学教室の事件ファイル』も異動はほとんどなく、『赤い霊柩車』も結婚することなく異動なしです。