ミュージカルの傑作脚本、募集中!
石井一孝さんのオリジナル曲満載のアルバム『ドアーズ・トゥ・ブレイク・フリー』(www.kazutakaishii.comで購入可能)。洋楽の影響を受けた石井さんによる、心地よいメロディと歌声が堪能できます。『ウェストサイド物語』の「マリア」もお洒落なアレンジで収録。
「やってみたいんですよね。もともとシンガーソングライター志望だったので、曲を書くのは大好きです。実は『花嫁付添人の秘密』という音楽劇で、作曲家として30曲くらい舞台音楽を書き下ろしたこともあるんですよ。今年は役者として23年目。この経験とノウハウを活かして、良い脚本を書ける人や素敵な詞を書ける人とチームを組んで、オリジナルミュージカルを書きたいです。
年齢的に46になって“機は熟した”感がありますし、ミュージカルを創ることは2か月ぐらいでできるような簡単なものではありません。構想から2年かけて初日を迎えるなんてザラです。“いつやるの?今でしょ!”と同世代の仲間と言い合っています(笑)。とにかくミュージカルを愛するものとして、作品を残したいんですよね」
――どんな作品を?
「まずは優れた脚本がないとミュージカルは成功しないので、まずは脚本、その次にストーリーを10倍よく見せる音楽かな。あと役者は無論良くなかったらダメですけど、いい役者仲間はいっぱいいるので、“お願いだから出てくれないかな”と頼みこむこともできると思うんですね(笑)。心を動かす脚本に合わせて、まずは数曲書き始めたいですねえ。
僕はコメディであれトラジェディ(悲劇)であれ、心に残るものを創りたいんです。論旨が明確で、読んだ後で“いい本だよね”と思えるような本と出会いたいですね」
最近出演した『シスター・アクト~天使にラブソングを~』写真提供:東宝演劇部
「やはり!まずストーリーですよね」
――今回の記事に「いい脚本募集中」と書きましょうか?
「グッドアイデアですね。いい本があれば、まず3曲くらい骨になる曲を書いて、演出家と脚本家と膝を突き合わせてディスカッションしたい。海外ではそうやって作るじゃないですか、“この曲はいらないな”とか“これはもっと悲しいイントロじゃないとだめだ”とか、何度も何度も加筆訂正して。『チェス』も、初日の前日ぐらいに話し合いで“一曲追加すべきだ”ということになり、ビヨルンとベニーがロビーで新曲の譜面を書いたという話を読んだことがあります。そして書き上げるや否やオケピに持って行って“これをやってくれ”と。ドキドキですよね。
でも、そういう苦労がなければ良い作品はできないですよね。いい芝居を作るためだったら、寝ずにでもやりたいと思うのは役者も作曲家も同じだと思います。僕は曲を書くのも文章を書くのも大好きなので、役者一筋なタイプじゃありません。だから、是非作品創りもしたいんです。この業界で生きてきた意味もそこに込められるんじゃないかな。もしも上演したら観に来てくれますか?」
――もちろんです。記事も書きますよ!
「うれしいな。やっぱり20年以上やってきて、好きな道なのでね。忙しくて、時間を見つけるのが一番大変なんですが、是非遠からず手掛けられたらなぁと思います。皆さん、力を貸して下さい(笑)」
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……と、ミュージカルへの熱い思いで締めくくられた今回のインタビュー。明るく楽しく、ラテン系に(?!)お話をされる石井さんの芯にあるものが、音楽、そして舞台に対する真摯な姿勢と分かり、圧倒的な回数を勤めた『レ・ミゼラブル』のあの誠実なマリウス像が重なります。そんな石井さんが太鼓判を押す今回の『三文オペラ』。いつか(近々?)誕生するかもしれないオリジナル・ミュージカルへの期待を胸に、9月の開幕を楽しみに待つこととしましょう。
*公演情報*『三文オペラ』9月10~28日=新国立劇場
*次ページで『三文オペラ』観劇レポートを追記しました*