健康維持・促進のためのサービスも展開
その一つが健康に関するサービスの展開です。医療施設や健康サービスを提供する12の施設が集まった「街のすこやかステーション」が設置され、例えば東京大学が監修する健康サポートなどのサービスが受けられるというのも、興味深い取り組みでした。また、「まちの健康研究所 あ・し・た」という施設では、最先端の研究成果を導入した健康測定サービスを受けられたり、運営施設に住民が参加する社会協働の仕組みなども取り入れられていました。これは、街づくりに大学や研究機関などが積極的に参加していることで実現できるわけで、住民にとっては単なるスマートシティではない付加価値が感じられる取り組みだと思います。
大学や研究機関というと、柏のはスマートシティが研究開発の拠点を目指していることも、これまでにない特徴と感じられました。具体的には東京大学や千葉大学、さらには企業の研究機関などが周辺に立地されることで、そこには多様な人材が集まってくるそうです。
そこで起業支援や交流イベントなどを実施することで、新しい産業を創出することも狙っているといいます。ですから、街の中にある賃貸住宅の中には国内外から集う研究者や留学生が集まり国際交流を育むシェアハウス型の賃貸住宅なども用意されていました。
このように柏の葉スマートシティは、一般的にエネルギー問題に対応するだけと考えられがちなスマートタウン・スマートシティの概念を、健康や市民の交流、新産業創造といったより幅広い分野に貢献する街づくりに広がる可能性があることを私たちに教えてくれる事例となっています。
このほか、この街づくりではスマートモビリティなどの取り組みも行われていました。三井不動産グループでは、東京・日本橋と日比谷では都市型スマートシティの取り組みも行っており、将来的には柏の葉スマートシティのような郊外型の取り組みとともに、世界に展開していく考えだといいます。
スマートハウス・スマートシティの技術やノウハウが海外へ
ハウスメーカーなどが現在、スマートハウスの開発を進めており、将来的にその技術やノウハウを海外へ輸出することを検討しているようですが、街づくりという分野でも今後、我が国の経済的強みになるかもしれないということが、この柏の葉スマートシティの取り組みにみられるわけです。ちなみに、柏の葉スマートシティは現在、まだ「第1ステージ」として位置づけられています。最終的に街全体が完成する2030年(第2ステージ)には約300万平方メートル、居住人口約5000人、就業人口約1000人、年間来街者数約700万人(第1ステージは約12.7万平方メートル、約26000人、約1000万人)の規模になることが想定されているといいます。
完成時に、そこでどのようなスマートな街の運営が行われており、そこに住み働く人たちがどのような暮らしをしているのか、私は非常に楽しみに感じられました。また、その時に、目論見通りにスマートシティの輸出などといったことが、我が国の産業にどのような貢献をしているかも注目したいと思いました。
ところで、柏の葉スマートシティでは、一般の人たちを対象にしたツアー(9月から)など各種イベントが用意されています。すぐ近くには、グループ企業の三井ホームによる次世代スマートハウスの実証実験棟「MIDEAS(ミディアス)」などもあります。
スマートハウスやスマートシティについて知る様々な機会に恵まれた場所でもありますから、関心のある方は一度見学会やイベントに参加されてみてはいかがでしょうか。