60年代レーシングカーと&70年代スーパーカーのストイックな進化
パワーレスポンスにこだわってプログラムされた専用開発のM158ユニットが、独MHGファールツォイク・テクニーク社製インテーク&エグゾーストパイプを介して、極めてメカニカルな扇情音を背後で奏で始めた。2ペダルゆえ、走り出してしまえば、ゾンダほどの緊張感はない。その代わり、軽さと塊感という、なかなかロードカーでは味わえない感覚を、身体で丸ごと受け止めるはめになって、やはり、ビビる。
とにかく、動きが軽い。そして、剛質である。アクセルペダルの踏み込みに対するレスポンスのダイレクトさと速さが尋常ではない。しかも、望外に乗り心地がいいから、つい意識が右足に集中し、そして、慌てふためく……。
恐る恐るスロットルを開けてみた。
激烈なトルクフィール。路面が少し窪んでいたのだろうか。リアが派手にスライドした。けれども、コントロールしやすい。すぐさま立て直し、また右足を強く踏み込む。いかにもターボチャージド風の多次方程式的なトルクの立ち上がりではなく、太いがキレイな線形を描いて加速する。トルクのある自然吸気風だ。益々、右足に力が入る。右足だけで行なう強大なパワーの出し入れが、楽しくてたまらない。
その間、ドライバーにとって、車体は小さくまとまっていた。まるで両手で前輪を抱え込んだようなハンドリングと、リアのスタビリティの高さ、そして軽さと剛性感がハンパない。
けれどもそれなりに盛大なメカニカルノイズがあって、助手席の人間にはどうもそれが気になったようだ。同じ人間をほぼ同じ時期にアヴェンタドールの隣にも乗せて、同じようにぶっ飛ばしてみたのだが、そのときは微塵も感じなかった恐怖を、ウアイラでは感じたらしい。
なるほどドライバーにも、既存のスーパーカーにはないスリルが伝わってくる。それは、音だったり、振動だったり、カーボンファイバーミラーの揺れだったり……。
60年代レーシングカーと、70年代スーパーカーの、ストイックな進化形。それが、パガーニの生み出すスーパースポーツカーの魅力というわけだ。