もはやフェラーリもランボルギーニもスーパーカーではない
乗り込む前からコーフンしていた。エンジンがかかった瞬間、もう舞い上がっていた。
そのまま踏み込んでいくと、天にも昇るような気分で、気づけば本当にそうなってもおかしくないような速度域に達していた。
いくらか冷静さを取り戻し、“速さ”の代わりに強烈なサウンドを楽みつつ、ハードブレーキングでまたもや恍惚となった。フロントノーズのフラップが、左右で別々の動きをしたのが見えたからだ。
クルマを停め、ホッとしたのも束の間、胸の高鳴りは再び最高潮に達し、心と身体がしびれていた。頭が、できればもう一度、触れてみたいと思っていた。
これが、この感覚をくれるクルマこそが、ホンマモンのスーパーカーだ。
アルゼンチン出身の“夢見る”青年が、行きがけの旅費だけを握りしめてはるばる一族の故郷イタリアに渡り、モデナの地に辿り着いたのは、80年代のことだった。ランボルギーニ本社工場のモップ掛けに始まった天才青年の物語は、今、周囲の想像を超える立身出世ストーリーとなり、華々しく、その第二幕を迎えたのだ。おそらく、そのことを昔から確信していたのは、当の青年だけであったろう。
彼の名を、オラチオ・パガーニという。
ゾンダに続く新型モデル・ウアイラは、パガーニ伝説の第2章だ。もはやフェラーリもランボルギーニも、スーパーカーではない。そう言わしめるだけの力と美と、熱と知が、パガーニモデルには確かに宿っている。