ジャガー50年ぶりのピュアスポーツカー
世界的に好調だというジャガー・ランドローバー。両ブランドともにアルミを使ったボディ構造で、「軽さ」で速さや燃費などを追い求めている。そして、ジャガーが「2シーター・ピュアスポーツカー」と謳うのは、同ブランドでじつに約50年ぶりだというFタイプ・クーペだ。通常だとクーペが先で、コンバーチブルの順だから逆にはなるが、だからこそまず気になるのはFタイプ・クーペのスポーツカー純度がコンバーチブル仕様と比べて、どれだけ高まっているかだろう。
グレードは、340psを発生する3.0L V6の「F-TYPE Coupe」、同じく3.0L V6でも380psまで引き上げられた「F-TYPE S Coupe」、550psを誇る5.0L V8の「F-TYPE R Coupe」というラインナップで、すべてスーパーチャージャーで過給し、トランスミッションは8速ATが組み合わされる。
エントリーグレードでもパワーは十分以上
最初に乗ったのはエントリー仕様の「F-TYPE Coupe」で、エンジンスターターを押すと、「ブォン」といううなり声を上げて目を覚ますのはコンバーチブルと同じ。最近スポーツカーやスーパースポーツカーに多い演出だ。「スポーツカーらしくていい!」、「早朝深夜は近所迷惑になりそう」など、賛否両論ありそうだが、気の弱い私にはエンジンオンのたびに「ブォン」と雄叫び上げる演出は不要で、解除スイッチが用意されていると、賛否両論の両者ともに納得がいくと思うのだが。
「F-TYPE Coupe」はエントリーグレードとはいえ、街中であっても、こりゃ間違いなくスポーツカーで、しかも最先端を走るとんでもないジャガーだと実感させられた。
美点は数あるが、パワー的には街中から首都高まで「ノーマルモード」でも十分に速くて流れを容易にリードでき、さらに「ダイナミックモード」にするとアクセルを深く踏み込む衝動に駆られるほど。
しかも、気になっていたボディの剛性感はすさまじく高く、アクセルを踏んでいっても安心感もすこぶる高い。何だかボンネットやドア、ラゲッジなど開閉か所がなく、削り出した金属の中で包み込まれているようだ。
ブレーキも強力なのに意外と扱いやすく、これなら街中でスムーズかつジェントルに走ることができるだろうし、公道で少し飛ばすくらいなら十分なストッピングパワーをすぐに得られる印象。
ハンドリングも軽快で、フロントノーズの長さを感じさせず軽快なフットワークで首都高速を駆け抜ける。ジャガー史上、最もクイックな「14.6:1」というステアリングギヤレシオをもつステアリングは、単にクイックなだけでなく、油圧式だけあって自然なフィーリングを得られる。
しかも3.0L V6エンジンくらいならライトウェイトスポーツとまでは言わなくても十分に軽さを感じられる。先述したように剛性感の塊のようなアルミモノコックボディが強みのFタイプ・クーペだが、アルミボディの弱点である微振動はフロアからほんの少し感じられたものの、気にするほどではない。
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