ドラマ/刑事・推理・サスペンスドラマ

憧れから共感へ 進化する刑事ドラマと視聴者の関係(2ページ目)

いつの時代もテレビを面白くする刑事ドラマですが、その内容は時代とともに変化しています。そこには時代の変化とともに視聴者の変化があります。カッコイイの対象だった刑事ドラマは考える対象として変化し進化しています。

竹本 道子

執筆者:竹本 道子

ドラマガイド

3:(オジサン層を中心に)組織のあり方を考える

ビジネス雑誌や戦国時代に精通する世代が組織を考えることは、当然です。
『隠蔽警察』は人間関係や組織の不条理が綿密に描かれ、話題になりました。組織をロジックで読み解く 東大卒の竜崎伸也(杉本哲太)は、キャリアに甘んじることなく 現場に学びながら、素直に反省もできる人物です。一人ひとりが 主体的に捜査できる環境を整備した敏腕なリーダーに、学び考えることは 多岐にわたりました。

竜崎伸也に比べ、温かい上司的印象を故意に排除して 組織に臨むのが『TEAMー警視庁特別犯罪捜査本部ー』の 佐久普吾(小澤征爾)です。こちらは組織を 大河ドラマ的に読み解くというかんじでしょうか。策士と呼ばれる主人公は、組織を効率的に使い、次から次へと仕掛けることで 事件を解決に導きます。一見冷淡ですが、実は一人ひとりの能力を熟知し判断してのこと。組織で働く視聴者にとって、こちらのタイプも興味深いリーダー像と言えるでしょう。


4: 正義と真実を考える

すべての刑事ドラマにおいて、正義と真実は大きなテーマになっています。人間として 哲学的にあるいは倫理学的に 様々な角度から考えるべき問題で、非常に難しい問題でもあります。


『相棒』の杉下右京(水谷豊)は、ドラマにおいて羅針盤であり指針であり 最後の砦として存在しているように思います。
裁判官制度、遺伝子問題など現実においても 未解決の課題に、杉下刑事はすべての英知を手繰り寄せ、正義に照らし合わせながら 挑みます。こういった問題提議の連続が、考え主張する視聴者を育て 活発にさせました。「もしも限界があるとするならば、それは諦めた瞬間でしょう」 の名言どおり、決して退かない杉下刑事の粘りに、視聴者もまた 考え続けるのでしょう。


事件に人間として向き合うのが、『新参者』の加賀恭一郎(阿部寛)です。事件は常 に 人間の手によるものだからです。そして、背景にある救いようのない哀しみに 静かに寄り添います。視聴者もまた 命に寄り添う意味を 考え始めます。解決はできなくても 凍てついた事件を包み 体温を与えることの大切さに 、視聴者は気づかされ 考えるのでしょう。

新参者 DVD-BOX
 
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます