松井、清原でも成し得なかった偉業を達成
森は8月14日のオリックス戦(西武ドーム)、6点ビハインドの八回一死走者なしから炭谷の代打で出場。榊原の2-2からの6球目、141キロの外角ストレートを逆らわずに振り抜き、西武ファンで埋まる左翼席へ叩き込んだ。7試合、8打席目のプロ初ホーマーだ。
「入るとは思いませんでした。7試合目は早すぎます。今は1打席しかないと思っているので、集中できる」と嬉しそうな笑顔を見せた。この高卒ルーキーの1発に、驚きを隠せなかったのは田辺監督代行だ。「追い込まれて逆方向……。高卒ルーキーで見た事のない対応力」と目を丸くした。
森は翌15日の日本ハム戦(西武ドーム)では、疲労での休養となった大阪桐蔭の先輩・中村に代わって“6番・DH”で本拠地&DHでの初スタメン出場を果たした。前日の1発が引き寄せた夢舞台。「中村さんの代わりが自分に務まるのか不安もあった」というが、そんな不安を吹き飛ばす出来事を自らのバットで起こした。
二回一死の第1打席。メンドーサの1-1からの145キロストレートを今度は右中間スタンドへ放り込んだ。先制のプロ2号は、前日の代打アーチから2打席連発だ。高卒新人の2打席連続本塁打は1993年の松井秀喜(巨人)以来21年ぶり。パ・リーグの高卒新人では1986年の清原和博(西武)以来28年ぶり。プロ1号、2号と2打席連続で記録した高卒新人は1971年の島本(南海)以来、実に43年ぶりとなる。
「自分が活躍するつもりで打席に立ちました。スタメンで使っていただけるので、絶対に打たないといけない」と強い気持ちが、松井、清原という球史に残る強打者に並んだ。「(2人は)全然上ですし、自分はまぐれですから」と謙遜した森だが、「今日打てたことはプラスにしたい」と目を輝かせた。
“森劇場”はこれだけでは終わらなかった。16日の日本ハム戦でも爆発した。7対8と1点を追う延長十回一死走者なしで代打に登場すると、日本ハムの6番手・増井の外角高め151キロストレートをバックスクリーンへ叩き込む3号同点ホーマーを放った。高卒新人の3試合連続本塁打は、1968年の江島(中日)以来、46年ぶり2人目の快挙。松井、清原でも成し得なかった偉業である。
大阪桐蔭では4季連続で甲子園に出場し、2年夏は藤浪(現阪神)とのバッテリーで春夏連覇。甲子園通算14試合で打率.473、11打点。左打者としては歴代最多の5本塁打を放った。高校通算41本塁打を引っ下げて、2013年のドラフト1位で西武へ入団した森の最大の武器は、メジャーリーガーに共通するファーストストライクから振っていく積極性と、打ちにいってもボールダマだと見逃すことができる選球眼の良さだ。これは、170センチ、82キロと小柄ながら下半身がドッシリしているからこそ成せる技で、ゴールデンルーキーと呼ばれる由縁である。
田辺監督代行が言う「リード面がまだまだ」というのがスタメン定着への壁である森。しかし、打撃でカバーできるだけのものは十分持っている。頼もしいルーキーが誕生した。