地面に掘った穴倉が住居
横井庄一記念館に再現された洞穴。昼間は洞穴に潜み、日暮以降に活動した
帰国した横井さんが公開したグアムでの生活は、実に驚くべきものでした。住居は、ジャングルの奥地に堀った深い穴(塹壕)。敵兵に見つかることを思えば、小屋を建てることも天然の洞穴を利用することもできません。
ろくな道具もなしに掘った穴は、28年間で6か所を数えました。最後に住んだ穴は、幅1.6m、高さ1.5m、奥行き4m。竹で天井を張り、床にすのこを敷いた内部には、空気穴、いろり、便所、排水溝を備え、後に見学に訪れた某ゼネコン社員が、その精巧さに驚いたそうです。とはいえ高温多湿で虫も多く、やはり後に現地を訪れた美保子夫人によれば「人間の住むところじゃない……」。
食べられるものは何でも食べた
横井さんはジャングルの南部、食料の少ない土地に隠れ、島の作物には一切手をつけなかった。
水が豊富で食用になる動植物も多いグアムでしたが、身を隠しながらの生活で安定的に食料を確保することは簡単ではありません。横井さんは目についたあらゆるものを食べることを試みています。ふんだんに手に入るヤシの実、パンの実をはじめ、パパイヤの木の芯、毒のあるソテツの実を精製して粉にしたもの、ヤマイモ。動物性蛋白質としては、川でとれるウナギや川エビ。毒ガマガエル、ネズミもよく食べ、仕掛けを工夫して野生の鶏や鹿を獲ることもあったそうです。