自分はどんなママになりたいんだろう『理想のママのつくりかた』
子どもが赤ちゃんの頃はそんなことなかったのに、気づいたら、いつも小言を言ってしまう。毎晩子どもの寝顔を見ながら「明日は絶対怒らないようにしよう」と心に決めるのに、それを実現するのがなかなか難しい……。気づいたらいつも「はやくして!」と言ってしまって、後で後悔する……。子育てをしながら、そんな気持ちになったことはありませんか? 私は、何度もあります。絵本『理想のママのつくりかた』に出てくるのは、いつも忙しそうで、子どもから見たら余裕のないお母さん。お話もゆっくり聞いてもらえないし、いつも急がされてばかりの女の子は寂しさがピークに達し、理想のおうちの絵をスケッチブックに色鉛筆で描きました。そのおうちの中には、女の子の「理想のママ」が両手を広げて待っていました……。
理想のママって?
『理想のママのつくりかた』というタイトルに、少しドキッ。我が子にとっての、そして自分にとっての「理想のママ」って、どんなママなのでしょうか?女の子が描いた理想の家の中には、カラフルで美味しそうなお菓子を用意したママが、笑顔で両手を広げて待っていました。でも、女の子が望んでいたのは、たくさんのお菓子ではなかったようです。自分の目を見てゆっくりとお話を聞いて色々なお話をしてくれる理想のママの様子に、嬉しさから涙を流し、たくさんのお話をする女の子。時間が過ぎ、理想のママとのお別れの時が来た女の子は、ちょっと曇った表情でおうちに帰ります。おうちでは、怪獣になってしまった本物のママが、女の子を待ち受けていました……。
理想のママは、ママだけじゃつくれない
怪獣になってしまったママを前に、「ママきいてー!」と叫ぶことができた女の子と、あっけに取られた表情の怪獣ママ。女の子が怪獣ママを理想のおうちに連れいくと、ある人が怪獣ママのことを手を広げて待っていました。母親だったら、こんなことができて、こんなことが我慢できて当然だろう……。そんな思いが多かれ少なかれ、母親以外の人に当たり前のように存在していたり、母親自身もある種の固定観念に縛られて自分を追いつめてしまうことがあるのではないでしょうか。同じような気持ちを多かれ少なかれ持っているであろう母親どうしでも、自分と他人の子育ての様子を比べて落ち込んでしまうことがあったり。こうした気持ちを感じるのは、どうしても、父親ではなく母親の方ですよね。
理想のおうちで感情を吐き出せた怪獣ママは、子どもの心に戻る経験をし、女の子への接し方に変化が出てきたようです。ママだから完璧じゃなきゃいけないということはないはずです。感情的にならなければ、「ママもちょっと疲れてるいるの」「これこれこうだから、もうちょっと急いでほしい!」と、会話が通じるようになった子どもには率直な気持ちを伝えても大丈夫なのではないでしょうか。お互いの気持ちを思いやった上での率直なやり取りを重ねていくことが、こうなりたいと願うそれぞれの親子・家族の姿に近づいていく道なのかもしれません。
決して、「怒ったりバタバタしてばかりいると理想のママになれないよ!」と言っている絵本ではないのです。そして、理想のママは、ママだけで作り上げていくものではありません。ママだけでなく子育てを取り巻くたくさんの人が読んで、そんなことを感じてもらえたらいいなあと思います。