というのも、人材が不足していると、工期や住宅の質に大きな影響が出てくるからです。では、ハウスメーカーは人材確保にあたってどのような取り組みをしているのでしょうか。
労働者不足が震災からの復興を直撃
ここでいう住宅分野の人材というのは、工事を行う人たち、大工さんや職人さんたちのことです。ご存じのように震災以降、復興工事に膨大な人員が求められ、東日本大震災以降、彼らの確保が住宅のみならず建設業界全体の重要な課題となっています。さらに2020年の東京五輪の開催決定が拍車をかけました。そしてあまり指摘されないことですが、2011年の政権交代、さらにはそれに続くアベノミクスにより全国的に公共工事が増えてきたことも、建設業における人材不足の状況を強めていると考えられます。さらに人材不足に加え、賃金も上昇傾向にあります。
バブル崩壊以降、公共工事が少なくなるにつれ、建設業に携わる人たちの賃金や建設資材のコストはずっと下落傾向にありました。その中で建設業に従事する人そのものも少なくなり、2010年の国勢調査によると建設業従事者は約40万人と、5年前と比べ約14万人も少なくなっています。それが、震災復興や東京五輪、アベノミクスなどの特需により、人材の需要が急激に上昇しているのが現在の状況なのです。
そうしたことがあり、震災で大きな被害を受けた東北3県(岩手、宮城、福島)では、災害公営住宅が未だに着工できなかったり、着工できたとしても工事に大幅な遅れが出ているのです。災害公営住宅などの住宅再建は、被災された方がの生活を安定させる重要な要素なのですが、それが滞っているのは非常に残念なことです。
さらに重大な建設業従事者の高齢化問題
国ではこうした状況を受けて、外国人の就労を増やし、人材不足の解消にあたることを検討しているようです。ただ、人が単純に増えるだけで、人材の問題が簡単に改称されるわけでもありませんし、治安維持なども考えなければいけませんから一筋縄ではいかなさそうです。さて、建設業界における人材不足の問題は近年のそうした状況以前に、実はより深刻さをはらんでいます。それは建設従事者の高齢化の問題です。上表をご覧下さい。建設業に携わる人たちの高齢化の様子がよくわかると思います。これは50歳以上の労働者が増え、若い世代が減っていることを表しています。
住宅業界の関係者の話によると、70歳代、中には80歳代の職人さんも現役で働いているそう。もっともこれからの高齢化社会のことを考えると、それも悪くは無いとも思われますが、現場での事故発生のことなどを考えると、不安にも感じられます。
その一方で、非常に難しいことだと考えられるのが、若手の人材が建設業の分野に就業しづらい状況にあることです。賃金の問題もありますし、何より技術を習得でき、独り立ちできるまで支えてくれるような場所、あるいはシステムがこれまで少なかったのです。
特に、大工さんなどの高度な技術を必要とされる分野はこれまで、親方に弟子入りして何年もかけて独り立ちをする、いわゆる「徒弟制度」によるスタイルが一般的でした。それでは独り立ちするのに時間もかかりますし、生活も安定しづらいものです。仕事自体は3K、ガテン系と呼ばれるほどですから、若い人たちが敬遠するのも無理はないことです。
ここまでで皆さんにご理解頂きたいのは、単純に人の量の問題で無く、しっかりと若い世代に大工さんや職人さんの技術が引き継がれてこそ、安心・安全・快適な住まいづくりが可能になるということであり、このことは皆さんのこれからの住まいづくりに決して無縁では無いということなのです。
次のページでは、あるハウスメーカーが取り組んでいる大工さん育成の取り組みを紹介します。その中から、皆さんが今後、住まいづくりや住宅取得を行うにあたって、重視すべきことを考えていきます。