私が取材したのはセキスイハイムが行っている大工さん養成の取り組みです。具体的には、埼玉県蓮田市にあるユニット住宅工場内に設けられている「東日本施工技術研修センター」で、育成の様子を見てきました。ここでは、セキスイハイムの施工会社や施工協力会社などに入社した若者たちを、約1年半をかけて「社員大工」として養成しているそうです。

社員大工として職人養成に乗りだしたハウスメーカー

教育の内容は社会人としてのマナーや安全などに関する基礎研修、現場の監督につき品質管理などについて学び、さらに据え付け(棟上げ)などを体験する監督・据付研修、工具の使い方などを学ぶ基礎訓練、親方について現場で作業を体験する大工訓練、技能試験というスケジュールで進められるといいます。

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親方がついてしっかりと技術指導を受けられるのも同センターにおける研修の特徴。これにより高度な技術を短期間で習得し、一人前の大工としてデビューできるようにしている(クリックすると拡大します)

このセンターは4年前に設立。セキスイハイムの建物が建てられ、その中で研修が行われていました。ちなみに、西日本にも同様のセンターがあるといいます。取材当日は今年入学した人など6人の若者たちが基礎訓練を受けている様子を見ることができました。

驚かされたのは研修で学ぶ技術の内容でした。セキスイハイムはプレハブ(工業化)住宅の中でも高い工場生産率(80%近く)を誇るハウスメーカーであり、ユニット住宅(鉄骨&木質=2×4)を供給していますが、ここでは木造軸組(在来)工法に対応できる木工技術を教えていたのです。

聞くと、例えば和室などの工事には高い木工技術が必要とされ、その技術も教えているそうです。卒業するためには洋室、階段、和室の技能試験で高い点数を取ることが求められるのです。木造軸組住宅について教えるのは、将来、卒業生が独立しても困らないようにするためだといいます。

言葉を換えると、社員大工としてセキスイハイムの仕事をこなし経験を積んだ後は、独立して自ら工務店を経営してもいいし、他の住宅会社の仕事を請け負う大工さんとして生きるという選択肢もできるということです。研修生たちにとっては、安定した収入や寮などの施設が整う中で、大工技術を学べる環境は非常に好ましいのではないでしょうか。

工期や品質に直結する大工・職人不足の問題

また、同じような年代の若者たちが集まって学ぶことで、お互いに切磋琢磨(せっさたくま)できる環境ともなります。親方の背中を見て学ぶような従来型の大工育成システムと比べ、このような社員大工による育成システムには早期に自立・独立できるというメリットもあるように感じました。

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同センターにおける課題の展示。ユニット住宅ではあまり求められない高度な木工技術を習得することで、将来独り立ちしやすいようにしていた(クリックすると拡大します)

ところで、このような大工さんの育成システムを取っているのは、セキスイハイムだけでなく、大手のハウスメーカーでは近年増えてきています。それは、大工さんの高齢化やベテラン大工さんの引退などがある一方で、若年者の参入がなく、担い手が減っていることによるものです。

逆にいえば、ハウスメーカー自らがこのような環境を用意しなければならないほど、大工さんや職人さんを巡る環境は逼迫しており、それぞれが危機感を感じざるえない状況になりつつあるということなのです。このことは私たち消費者はしっかりと認識しておくべきではないでしょうか。

消費者目線からすると高額な買い物である住宅取得で品質が悪くなるのは大問題ですし、決められた工期を先延ばしされるのも大変困ったこと。ただ、そもそも施工品質が悪くなるのも、決められた工期を守れないのも結局は供給者側の都合ともいえます。

しかしながら一方で、工期を守ったり品質を落とさないという大前提をないがしろにして、仕事を取ってしまう住宅会社も世の中にはないわけではありません。そんな住宅会社に出会わないようにするためには、どのような努力をしているのか、しっかりと確認をするべきだと私は思います。ですから、まずは施工現場をチェックしましょう。

特に、ローコスト系の住宅会社などでは要チェックです。また、比較的安く住宅を建てられる傾向がある地域の工務店なども、近年は自前で大工さんや職人さんを雇っているケースは少ないです。逆に、この点に私たちに納得できる説明をできる住宅会社なら、信頼度は高いと考えられます。

このお話は欠陥住宅問題などにもつながりやすので、今回改めて取り上げてみました。
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