中学受験の志望校は、いつ決めるのか……いつまでに、どうやって?
まだまだ残暑が厳しいですが、いよいよ9月を迎えます。過去問演習や塾の志望校対策講座も始まりますので、そろそろ志望校を決定しなければなりませんね。しかし、本当にここでいいのかと、いろいろ悩む時期でもあります。そこで今日は、志望校決定にまつわるお話をしていきたいと思います。
1.志望校っていつまでに決めればいいの?
入試本番は1月・2月です。ということは過去問演習をしっかりおこなうことを考えればその3ヶ月前の10月頃には志望校を決定しておきたいもの。しかし模試の成績もまだ不安定で、合格判定もまだまだ足りない状況だと、10月の段階で決めきれないという方も多いのではないでしょうか。では志望校っていったいいつまでに決めればよいのでしょう。
私はこの問いに対して、「12月でもまだ間に合うかも知れませんが、準備期間を考えると8月中にはある程度は決定しておくのがよいでしょう」とお答えします。
まず、志望校に合格するためには、なんといっても「過去問演習」を充分におこなうことが必要となってきます。保護者向けの私立中学の入試説明会などに参加いたしますと、多くの学校で入試担当の先生から「過去問は繰り返しおこなってください」と言われます。これは、私立中学の側が、過去問をしっかりやりこんでいる生徒を重視したい=本校への入学を強く希望しているかどうかを見極めたい、と考えているということに他なりません。そのため入試形式を毎年揃えたり、過去問の類題に当たる問題を出題したりして、過去問をしっかりやりこんできた生徒が有利になるようにしているのです。
多くの学校で「過去問」が重視されている以上、志望校の過去問をしっかりやりこむ期間を充分設ける必要があります。そこで志望校の決定は「出来る限り早めに」という結論に達するのです。6年生の秋以降に開催される学校説明会にいろいろ参加してから決める、というのでは正直遅すぎる感があります。逆に現在小5生のお子さんをお持ちの方は、この秋以降の入試説明会にたくさんご参加いただき、来年の夏までには志望校を決定できるように準備を進めておかれることをお勧めいたします。
小6生の保護者の方で、現段階でまだ志望校が決まっていないという方は、夏休み中に家族会議を開いて、ある程度の方向性を定めておかれることをお勧めいたします。
2.志望校ってどんなふうに決めればいいの?
保護者の方と面談をしていると、偏差値表に横線を引いて「このレベル以上の学校でないと進学させるつもりはありません」とおっしゃる方に時々出会います。もちろん偏差値は学校の価値を測るひとつのスケールですし、親心として少しでも優秀な学校にわが子を入れたいと考える気持ちは理解できます。しかし一方で先を見通した時に、果たして偏差値という価値基準が将来どれほどの意味を持つのか、疑問を感じざるを得ません。ちょうどタイムリーな話題として先日、一橋大学が卒業単位に海外留学を入れると発表いたしました。つまり海外留学を経験しないと事実上卒業できないシステムになるわけです。グローバル化が進み、英語ができないと社会に出てから役に立たないような時代になりつつあります。そして大切なことは、大学の教育システム変更の潮流が大学の入学試験のやり方に影響を与え、それが中学受験まで下りて来るのに少し時間がかかるということです。もしかしたらお子さんが高校を卒業する頃には、今の偏差値表における学校の勢力図が、大きく変容しているかもしれないのです。
志望校選びで大切なことは、保護者の皆さまが通って嬉しい学校を選ぶのではなく、お子さんの将来を見据えて、通わせたい学校を選ぶということです。中学受験をさせる原点に今一度立ち返って、「誰のための中学受験なのか」をもう一度考え直して欲しいと思います。
では具体的にどんな学校を選ぶべきなのでしょうか。私はやはりキーワードは「グローバル化」だと思います。ネイティブスピーカーが常駐しているのか、英語の授業時間数は多いのか、海外留学制度は充実しているのかなど、英語教育に力を入れているかどうかをチェックされるとよいでしょう。
もう一つ大切な視点として忘れてはいけないのが、相性の問題です。中高一貫校の場合、お子さんが6年間通う学校ということになります。相性が合わないと、とてもつらい中学・高校時代を送ることになってしまいます。活発なお子さんなのに物静かで落ち着いた学校に入学してしまうと、窮屈な思いをしてしまうでしょうし、おとなしいタイプのお子さんが元気なお子さんの多い学校に入ると、自分の居場所がなかなか見つけられないかもしれません。
相性が合うかどうかを判断するにはどうしたらよいでしょう。もちろん学校に行ってみるのが一番良いですが、たとえば文化祭などの場合は普段とは違った姿を見せている場合もありますので、注意が必要です。もっとも簡単な方法は、実は過去問です。過去問には「こんな生徒が欲しい」という学校側の希望がたくさん盛り込まれています。よって過去問との相性が良ければ、その学校との相性も良いといえるのです。
時々、作文とか記述がとても嫌いなのに御三家を目指しているお子さんを見かけます。でも御三家が記述中心の出題なのは、入学後にレポート提出などをたくさん課すからなのです。ということは記述が好きではない生徒が御三家中に入学すると、入学後に苦労することになってしまいます。
過去問演習をすることで、その学校との相性を測るとともに、合格するための訓練にもなりますので、まさに一石二鳥です。また過去問をやりこむことで、無理やり志望校に自分の相性を近づけていくことも可能なのです。9月からの過去問演習、是非頑張ってください!
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