交通インフラの充実と地価の関係
交通機関の発展が、その沿線の地価に影響を及ぼすことは周知の事実であろう。だが、それは一様では無い。前評判は高かったものの、実際に開通してみると徐々にトーンダウンして(落ち着いて)いったり、最初からそれほど上がらなかったり。逆に、ここまで相場が上昇するのかといった事例もある。「武蔵小杉」はその典型だろう。「武蔵小杉」駅前でもっとも多くタワーマンションを手掛けた三井不動産レジデンシャルの例を用いれば、2006年販売「パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー」坪@238万円。2012年販売「パークシティ武蔵小杉ザ・グランドウイングタワー」は同@291万円。6年間でじつに22%の値上がりである。細かいようだが、「パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー」が47階建てなのに対し、「パークシティ武蔵小杉ザ・グランドウイングタワー」は38階建て。実質的な上げ幅は見た目以上だ。
理由を交通機関の発達に絞ると、以下のようになる。まずはJR横須賀線・湘南新宿ラインの新駅設置。これにより「新宿」「池袋」「東京」「品川」が直通に。次に東急東横線の副都心線(ならびに西武池袋線などが)相互乗り入れに。さらに、武蔵小杉は東急東横線のイメージが強いが、もともと東急目黒線にも乗り入れており、「大手町」「日比谷」へ直通でいける。
前述したマンションの印象的だった販売員のコメントが、「東京と横浜にそれぞれ勤務している共働き世帯が多かった」。神奈川県川崎市は、待機児童数が多いことで知られている。東京と横浜の中間に位置し、自宅が駅前なら子どもを預ける選択肢も広がるということか。「坪単価300万円近い物件なら、都内にたくさんあるのに」といった見方は市場の実態を把握していない的外れなものかもしれない。
「羽田」の国際空港化
昨年、取材した現場のなかでは「川崎」が同じ部類に入るだろうか(参考記事:長期的に値上がりが期待できそうな駅)。川崎駅周辺は大まかにいえば、坪単価@200万円を軸にプラスマイナス20万円程度のレンジに入っていたが、いまでは@250万円~@280万円程度に底上げされているようだ。これも、羽田空港の国際化によるロケーションの優位性向上と、駅周辺の景観が「ラゾーナ川崎」を筆頭に様変わりしたからではないかといわれている。先日、JR東日本が検討する「羽田-東京間を18分で結ぶ新線」がメディアに取り上げられた。2013年、訪日外国人数は初めて1000万人を突破。5年で倍増した計算だ。さらに政府は「2020年2000万人」の従来目標を「2500万人」に引き上げた。海外からの玄関口となる「羽田と都心部の交通インフラ整備」は、観光に力を入れる日本の主要事業のひとつといえるだろう。
人の流れが変わり、そのラインが太く(=動く人の数も増える)なれば沿線の不動産は少なからず影響を受けるだろう。その意味では近い将来最も影響を与えそうな存在が「品川」だ。
注目が高まる「品川」
「品川」エリアは、そもそも都市再生緊急整備地域やアジアヘッドクオーター特区に指定されていたが、羽田空港の国際化やリニア中央新幹線の始発駅となることで、そのロケーション上の役割が改めて見直され、今後の整備における「まちづくりガイドライン」の改訂を余儀なくされた。新たに公表されたのが今月17日。その内容は鉄道にとどまらない大々的な交通インフラの拡充である。最大のポイントは、環状4号線(外苑西通り)の延伸。現在、目黒通りで留まっている同線を品川駅まで延長し、さらには山手線を超え首都高まで伸ばし連結されるという。実際、都市計画道路で決定しているものと構想段階のアイデアが織り交ざっているということだが。
さらに、都市の魅力を高めるという点で「MICE」(現状、アジア他国に引けを取る国際会議などの大規模イベント開催など)による集客効果や外国人住宅の整備にも力を入れる。実現した暁には一帯の不動産の利用価値が向上することは間違いないだろう。ちなみに外国人の住宅ニーズは、アンケートから想像するに「交通・生活利便が良い」「広い」「P・P(プライベート・パブリック)分離の間取り」「インターナショナルスクールに通いやすい」といった傾向があるようだ。収益物件の購入を検討されている方は参考にしたい。
【参考記事】
品川~田町間の将来性<まちづくりガイドライン2014(案)>
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