私はこれまで、大手進学塾および自ら経営する塾で30年近くに渡り、小学生の指導をしてきました。その中で特に強く感じることは、「子ども達の国語力が本当に低下した」ということです。
その原因は様々あります。まず第一に、マンガやアニメなどのサブカルチャーと呼ばれるものが発達し、それが過剰供給されていることで、子ども達の活字離れが進んだことが挙げられます。また、親子間の会話が紋切り型となり、中味がなくなってしまったことなども、その要因のひとつでしょう。さらに、国語力アップにつながらないと感じるような国語教育が学校や塾で続けられていることも、大きな影響を与えていると考えられます。
今回の学習法シリーズでは、一般的に信じられている国語教育への誤解を取り上げ、そのどこが間違っているのか、そして、じゃあどうすればいいのか、についてお話ししたいと思います。
誤解1 読書量が多ければ、国語は自然とできるようになる
これは、昔からずっと言われ続けてきたことです。私自身、子どもの頃に塾の先生や母親に、「本を読め」と何度も言われた記憶があります。確かに以前は、読書量が多い生徒は、相対的に国語の成績が良いという傾向がありました。しかし現在はこれが必ずしも一致しなくなってきています。これは何故なのでしょうか。
私はその理由を、読書の質自体が、昔と今とでは変質してきたからではないか、と考えています。
情報化時代が進み、世の中全体が「スピード第一主義」になってしまった現代において、読書も「早く読み終えること」「たくさん読むこと」に価値が置かれるようになってきました。子供が一冊の本をあっという間に読み終えれば、お母さんは「あら早く読めたわねえ!えらいわ!」と褒め、夏休みに読書の宿題が出されれば、20冊読んだ子が教師から高い評価を受けます。
こうして育てられた子供達は、速読ばかりに気をとられ、本来国語力を醸成する「精読」からはどんどん離れてしまいます。これでは、語彙力も上がらないし、読解力も養われる筈がありません。結果、子供達の国語力が全体的に低下していったと考えられるのです。
では国語の力を高めるには、一体どうしたらよいのでしょうか。読書は必要ないのでしょうか。大切なことは「乱読」ではなく「復読」にあると私は考えます。「復読」とは、同じものを繰り返し読むことです。10冊の本を読むのではなく、1冊の本を10回読む。するとだんだん文章の流れが明確になり、国語力向上において最も重要な「精読」ができるようになっていきます。解らない単語の意味を辞書で調べながら読めば、語彙力も上がり、それが読解力アップにもつながります。
理想は、今のお子さまの語彙レベルよりも少し上のレベルの本を、10回読むことです。もちろん本人が気に入っている本で構いません。また、保護者の皆様も同じ本をお読みいただいて、話題を共有していただくとより効果が期待できます。時間のある夏休みを利用して、是非「復読」にチャレンジしてみてください!
次のページでは、二つ目の誤解についてご説明します。