辛味だけではない唐辛子の魅力
鷹の爪は、日本種の唐辛子の中で辛味の強い品種。
他にも、生であればビタミンC120mg、食物繊維10.3g(100g中)なども多く含みます。辛いですから、一度にたくさん食べることはできませんが、実は栄養豊富な食物なのです。以前葉唐辛子の佃煮をいただいたことがありますが、やや辛味は控えめでおいしくいただきました。栄養価も高いので、機会があれば食べてみてはいかがでしょうか。
また赤いトウガラシには旨み、甘み、酸味などが含まれているそうです。月刊『現代農業2013年8月号』「トウガラシの秘密(信州大学農学部 松島憲一)では、次のように述べています。
スペイン料理は、甘味種のパプリカのパウダーをだしのような感覚で料理に使うと聞きました。私もガスパチョや、パエリヤを作る時には必ず使っており、確かに旨味が加わります。トウガラシの辛味だけでなく、旨味や甘味も含めて、私たちは辛い料理にひかれていたのかもしれません。長野県北信地方のトウガラシ在来品種「ぼたんこしょう」の成熟果実を使って計測したところ、旨み成分であるグルタミン酸の含量が163.3mg/100g、糖度(ブリックス)が8.2となっており、旨味と甘味を兼ね備えていることがわかった。ちなみに、グルタミン酸を多く含んでいるトマトが同じ方法での計測で232mg/100g、糖度は一般に5~7とされているので、旨味はトマトより劣るものの甘味は同等かそれ以上ということがわかる。
食欲が低下して夏バテしやすい今の時期、うまく辛味を活用して、食事をおいしくとれるようにしましょう。また夏は冬よりも代謝が落ちる時期ですから、代謝を高める上でも、辛味をうまく活用しましょう。
カプサイシン類の使いこなし
かわいらしい唐辛子の鉢植えもよく見かけます。
カプサイシン類は、水には溶けにくく、油やアルコール、酢に溶けやすい性質をもっています。沖縄では、泡盛に、島唐辛子を漬け込んだ「コーレーグス」という調味料があり、沖縄ソバの辛味付けには欠かせません。またタバスコ・ペッパーソースも、酢が使われています。昔の人は、使い方を工夫して、経験的にうまく成分を活かしていますよね。
また辛味が苦手な方は、トウガラシの辛味は後に残るタイプなので、ヨーグルトや牛乳、アイスクリームなどでコーティングすることによって、辛味を和らげる方法がおすすめです。
かつては辛味ブームでいつもトウガラシを持ち歩いている達人もいました。ただ、常識を超えるような大量摂取は、胃腸炎や、肝臓や腎臓に障害を与えることもあります。また妊婦や授乳中の女性、子どもは避けた方がよいでしょう。
また不用意にトウガラシやソースなどを触った手で、目や鼻などの粘膜を触って、痛みでひどい目に遭いますので、気をつけてください。
民間療法や、医薬品にも活躍
トウガラシは食べるだけでなく、他にも活用法が多様にある食品の一つだと思います。例えば、防虫効果・殺菌効果は古くから知られ、米びつに入れたり、お漬物に混ぜることもあります。昔の人は寒さをしのぐために、靴下や靴、足湯などに鷹の爪をいれ、足先を温めていたそうです。確かに、いつまでもほこほこと温まります。
カプサイシンは痛みを起こす作用がある一方で、鎮静作用もあり、肩こり、筋肉痛などの軟膏や湿布薬などに利用されます。他にもトウガラシチンキとして皮膚刺激成分として育毛剤などの薬品、防犯スプレーなどにも使用されています。
古くから現代に至るまで、トウガラシは食べるだけでなく、様々な形で、私たちの暮らしに役立っているのですね。
トウガラシの活用例として、スーパーなどで材料が揃う便利な「薬念」をご紹介していますので、ご参考に。
関連リンク
・味覚ではなく痛覚で感じる? 不思議な辛み(食と健康)
参考/
・植物の辛味成分について(日本食品分析センター)
・トウガラシの辛味の秘密(月刊『現代農業2013年8月号』巻頭特集「熱いぞトウガラシ」コーナーより/松島憲一)
・分析(熊本県農業研究センター)
・痛みと鎮痛の基礎知識(滋賀医科大学)
・トウガラシ(健康食品の安全性・有効性情報)
・食品安全委員会が収集したハザードに関する主な情報
・スパイスのサイエンス(文園社)
・80のスパイス辞典(フレグランスジャーナル社)
・唐辛子遍路(ハウスポケットライブラリー)
・「トウガラシ」(日本農業新聞)
その他