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宵っ張りの小さな子に『いやだあさまであそぶんだい』

「もう寝なさい!」というおかあさんの言葉をなかなか聞かず、まだまだ遊びたがる小さな子。夜の外の世界へ一緒に遊んでくれる相手を探しに出かけるのですが……。「ひとばんじゅうおきてるんだーい」と叫んだぼうやが、段々眠くなってくる様子を描いた幻想的な絵本『いやだあさまであそぶんだい』は、1日を過ごした小さな子どもの心をクールダウンさせ、穏やかな眠りに導いてくれそうです。

執筆者:千葉 美奈子

まだまだ寝たくない! 『いやだあさまであそぶんだい』

「もう寝なさい!」というおかあさんの言葉をなかなか聞かず、まだまだ遊びたがる小さな子。どこのおうちにもありそうな光景ですね。『いやだあさまであそぶんだい』に出てくるぼうやは、その大きさや体形から、1~2歳ぐらいの子に見えます。おかあさんの言葉を振り切って、夜の外の世界へ一緒に遊んでくれる相手を探しに出かけるのですが……。「ひとばんじゅうおきてるんだーい」と叫んだぼうやが、段々眠くなってくる様子を描いた幻想的な絵本は、1日を過ごした小さな子どもの心をクールダウンさせ、穏やかな眠りに導いてくれそうです。

 

車に乗っておかあさんから逃げちゃおう!

「おやすみのじかんよ!」「おやすみよ!」と、重ねて声をかけてくるおかあさん。家の中で赤いすてきな自動車で遊んでいたぼうやは、全身の力を込めてエンジンをふかし、猛スピードで家の外に向かって走り去ってしまいます。自動車から出る煙に包まれたおかあさんは追いつくことができません。強い意志を持って自信たっぷりに見えるぼうやの小さな背中。どこへ向かうつもりなのでしょうか?


「誰かぼくと遊んで」の願いもむなしく……

最初に出会った、優しい表情の大きなとらに「ほえっこしようよ」と呼びかけるぼうやですが、とても疲れて眠たそうなとらからの返事は、つれないのです。次に会った兵隊さんたちの行列に「こうしんしようよ」と声をかけるも、みんなお城に帰るところ。隊長には「よるは、こうしんしないよ。ゆめを、みるときだよ」と諭されてしまいます。小さな汽車も、気持ちよさそうに眠ったたくさんのお客さんを乗せ、車庫に帰る途中。「きみもおかえりなさい」なんて言葉、聞きたくないのに! 楽隊には、子守唄まで演奏されてしまいます。

温かい色に包まれた幻想的な光景が、ページをめくるたびに広がります。そしてみんな、とろんとした眠そうな目をしているのです。読んでいる方も、つられてまぶたが重くなってしまいそう……。


まだ眠りたくない子どもの心の中

おうちを飛び出したぼうやの先に広がる世界を見ていると、まだ眠りたくない小さな子どもの心の中には、こんな世界が広がっているのかな、と思わせられます。そして、自分が子どもの頃にもそうだったはず。夜通し起きていたらはてしない楽しみが広がっているような気がして、まだまだ起きていたかったし、大みそかなどに「今日は夜更かししていいよ」と言われると、どんなに心がワクワクしたか。結局日付が変わる前には眠ってしまったりするんですけどね……。そんな気持ちを思い出すような懐かしい感覚にも包まれました。


ぼうやを最後に探しに来たのは?

さて、誰からもつれない返事しかもらえなくて、段々まぶたが重くなってきたぼうや。元気いっぱいに家を飛び出した自動車も、眠くなってしまったようです。そんなぼうやを放っておけないのは、「ぼうやが寝るまで休めない人」。なかなか眠ってくれない小さな子どもに毎晩疲れ気味な世の中のおかあさんにとっては、かなり心に響くシーンが待っています。ぼうやが旅した広い外の世界の動物たちは、よく見ると、あれれ? どこかで見たことがある存在たち!?

自分のお部屋から生まれた豊かな発想で、こんなにすてきな世界が子どもの心の中に広がっているなんて……。お子さんが眠りについた後に、再度じっくり読み返してみると、ぼうやの部屋の温かさがじんわりと伝わってくるでしょう。
 
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