珈琲豆のほのぼの恋物語『じっくりおまめさん』

恋も珈琲ドリップもじっくり、じっくり……『じっくりおまめさん』

人間の性格とは不思議なもので、例えば、のんびり屋さんもいるし、せっかちさんもいます。必ず親に似ているというわけでもないし、どれかが1番良い性格ということもありません。どうやらそれは人間世界に限ったことではなく、珈琲豆の世界でも同じようです。

珈琲豆が暮らしているコーヒー村に、なんでもじっくりじっくり取り組むじっくりおまめさんが住んでいました。そのおまめさんの微笑ましい恋物語を描いた絵本『じっくりおまめさん』をご紹介しましょう。珈琲の香りが感じられる楽しい絵本です。

村人たちのアシストで、この恋成就させましょう！

コーヒー村に暮らすおまめさんたちは、みな朗らかで珈琲が大好きです。中でもとびきりおいしい珈琲を淹れることができるのがじっくりおまめさんです。だって、じっくり、じっくり、じっくり、じっくり、本当にじっくり珈琲を淹れるのですから。

でもじっくりおまめさんは珈琲を淹れるのは得意ですが、何でもじっくり考えすぎてちょっぴり優柔不断なところがあります。そのため、可愛いにっこりおまめさんに好意を持っていることさえ伝えることができません。

まあ！ いまどきこんな純情な若者がいるなんて信じられませんね。真面目で慎重派のじっくりおまめさんを見ていると、おせっかいの1つも焼きたくなるというものです。彼の様子をみかねた村のおまめさんたちも同じ気持ちのようで、何とかして2人を結び付けようと作戦会議を開いています。にっこりおまめさんも、じっくりおまめさんを好きだということをみんな知っているのです。はたして「じっくりおまめさん恋の告白大作戦」をたてた村人たちの試みは成功するのでしょうか？

村長さんをはじめ、村人みんなの恋のアシストぶりが尋常ではありません。嘘をついて彼をにっこりおまめさんの家へ向かわせる人もいれば、お土産のプリンや花束を用意した人もいます。そのくらいは序の口で、なんとにっこりおまめさんを楽しませるカエル付手品セットをくれた人までいました。「そんなもの、喜ぶわけがない」と決めつけてはいけません。事実は小説より奇なりということもあるのですからね。

ところが村人たちの熱い後押しがあっても、じっくりおまめさんはやっぱりじっくり考えるのです。「じっくり、じっくり、じっくり、じっくり」とね。最初は煮え切らない人だなあと感じさせるじっくりおまめさんですが、なかなかどうして大したものではありませんか？ 人生の一大事においても、いえそんな大切な時だからこそ、自分のスタンスを変えることなく、あくまで自分らしくにっこりおまめさんに向き合っているのですから。

さて、気になる2人の恋の行方はハッピーエンドということだけお伝えしておきましょう。でも告白の成否を決めたのは、何を隠そうあのカエルだったのですよ。えっ、カエルがどんな風に？ それは読んでのお楽しみです。


【書籍DATA】
たちもとみちこ：作
価格：1296円
出版社：学習研究社
推奨年齢：5歳くらいから
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