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鬼才ピアニスト、ファジル・サイ日本初演インタビュー

ファジル・サイと言えば、孤高の鬼才ピアニストとして知られますが、作曲家としての活動もますます盛ん。2014年秋にはなんと交響曲の日本初演も行われます。演奏家であり作曲家であるとはどういうことなの? 独特の演奏の秘密は? インタビューしました。

大塚 晋

執筆者:大塚 晋

クラシック音楽ガイド

ファジル・サイ作曲の交響曲が遂に日本初演!

ファジル・サイ

演奏中の鬼才ファジル・サイも、インタビュー時は穏やかな紳士

「鬼才ピアニストは誰?」と聞かれたのなら、数名の顔が浮かんでしまうのがこの楽器の深さ・広さを物語っていますが、真っ先に名前が挙がる一人がトルコ出身のピアニスト「ファジル・サイ」ではないでしょうか?

1998年にモーツァルトのトルコ行進曲などを弾いたCDでデビューした時からメリハリの強い個性的演奏で一躍人気ピアニストとなった鬼才は、その後も独自の世界観に磨きをかけ続けています。そして、もう一つ、人々が彼を“鬼才!”と感嘆する理由は、彼が作曲家でもあるから。デビュー当時より自作のピアノ曲を弾いたりしていましたが、今では交響曲を既に3つ書いているバリバリの作曲家で、2014年10月11日(土)には、最初の交響曲である『イスタンブール交響曲』が日本初演されるというのです。

「鬼才、天才、ファジル・サイ!」というキャッチコピーに大いに納得する孤高の道を歩む彼は一体どこを見ているのでしょう? インタビューしました。

イスタンブール交響曲 日本初演について

ガイド大塚(以下、大):2014年10月11日(土)に予定されている、サイさん作曲の『イスタンブール交響曲』日本初演、おめでとうございます!

ファジル・サイ(以下、サ):ありがとうございます。飯森範親さん指揮の東京交響楽団による演奏なのですが、実は飯森さんは既に6回、ヨーロッパでこの曲を演奏してくださっているのです。作品を深く理解し、素晴らしい演奏をしてくださいました。ですので、今回も嬉しく思い、また誇りに思います。

ファジル・サイundefinedイスタンブール交響曲

ファジル・サイ作曲『イスタンブール交響曲』のCD。演奏風景を収めたDVDも付随

大:そうだったのですか! 曲の内容について教えてください。

サ:曲は7つの楽章からなり、イスタンブールについての7枚の絵画のような作品です。イスタンブールに来たことがある方は、何か通じるものを感じていただけるかもしれません。来たことがない方も、街の音、空気の流れなどを感じていただけるかと思います。

この曲は通常のオーケストラに加えて、トルコの楽器を演奏するソリスト3名が必要です。ネイというフルートに似た管楽器、トルコの打楽器、それから、カーヌーンというツィンバロム。いわゆるツィンバロムはピアノの原型のような楽器で、むき出しの弦をバチで叩きますが、この楽器はバチではなく爪をつけた指で弾きます。

それらの楽器は、イスタンブール交響楽団所属のメンバーが訪日して演奏します。彼らは古典の曲も、現代曲も演奏できる素晴らしいソリストたちです。彼らの演奏を日本で聴いていただけるということもとても嬉しいですね。

大:なるほど。既に発売されているCDを聴きましたが、れっきとしたオーケストラ作品でありながら、イスタンブールへの旅情が掻き立てられる色彩感豊かな曲でした。公演が楽しみです! あとそのCDに一緒に収められていた『ヘザルフェン』という曲も面白かったのですが、この曲はどういった内容なのですか?

サ:ヘザルフェンというのは、実在したトルコの発明家で、17世紀に人工の翼をつけてトルコのヨーロッパ地域からアジア地域へ3キロも飛んだのだそうです。

大:えっ! 神話ではなくてですか?

サ:はい。神話ではありません。ですが、彼は数学者でもあったため、当時の政府により危険分子と見なされてしまい、牢獄に入れられ、追放されたアルジェリアで亡くなりました。非業の最期を遂げたのです。

大:ななんと……、そんな人がいたとは知りませんでした。

サ:私は彼の人生にとても興味を持ち、曲を作りました。こちらもネイを使っています。

大:なるほど……。ネイの音が最初は風を感じさせますが、最後は寂しさを感じさせるのはそうした人生を表していたのですね……。改めて聴き直します。
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