白パンは、全粒粉や胚芽入りのパンと比べると、ヘルシーではないと思われがちでした。
白い食品は、ヘルシーっぽくない?
例えば、マクロビオティックでは、「一物全体」=「できるだけ食べ物の命全体をいただく」という考え方から、主食の基本は白米よりも玄米が推奨されています。確かに、栄養面から見ても、白米のように精製度が高い食品は、精製度の低い玄米よりもビタミンやミネラル、食物繊維等が減り、栄養価も低くなります。
また糖尿病の人や、低糖質ダイエットに関心のある人は、食品を選ぶ判断の一つとして、カロリーの他に、GI (グリセミック・インデックス)値を目安とされる場合があります。GI値は、食後の血糖値の上昇速度について、ブドウ糖を基準(100)に相対的な数値で表されています。
GI値が高い食品は、血糖値の急激な上昇・下降を招き、糖尿病のリスクが高まったり、低血糖症、ホルモン分泌の異常などが起こりやすくなります。飲食した後血糖値が上がると、インスリンが分泌され、糖を細胞に送ってエネルギーとしたり、過剰な糖分はグリコーゲンや脂肪として蓄積するように働きます。この身体の仕組みに着目し、血糖値が急上昇しない食品を食べてインスリンの分泌を抑えることで、糖尿病の改善や、ダイエットに役立てようという考え方があります。
ちなみに、糖尿病等で病院で食事指導をうけているならともかく、健康な人が安易にごはんを抜くといったバランスを欠いた食事を続けるような極端なダイエットは、ガイドはおすすめしません。
話を戻すと、こうした考え方から、白砂糖よりは黒砂糖、白米よりは玄米、白パンよりは全粒粉パンなどの精製度の低い食品の方が、GI値は低い傾向にあり、また栄養価も高いとは言えます。健康や美容に関心が高い人たちの間では、こうした面から「白い食品」は、ヘルシーではない存在として見られれている場合があります。
白いパンは、乳酸菌を増加させる?
最近、ガイドは興味深い研究報告(リンク DE ダイエットより)を見つけました。スペイン・オビエド大学の研究で、白パンに乳酸菌を増やす効果が示されたというのです。研究チームは、腸内細菌のバランスを良好に保つためにはどのような食事をすればよいのか、特に食物繊維とポリフェノールとの組み合わせに焦点をあてて調査しました。
38人の健康な成人を対象に、食物摂取頻度調査と糞便中の細菌の分析を行って、その関連を調べたところ、柑橘類由来のペクチンは、ある種の善玉菌を減らしてしまうことがわかったというのです。
食物繊維の一つであるペクチンは、食品により水溶性、不溶性があり、単体についての先行研究での結果は逆でした。研究者らは、柑橘類に含まれる何らかの成分とペクチンとの相互作用によって、この予想外の結果が生まれたのではないかと考えています。
さらに今回最も斬新な発見とされたのは、今まであまりヘルシーなイメージがなかった白パンに有効性があったのです。
研究チームの研究者は、次のように述べています。いわゆる普通のパンに含まれるヘミセルロースと難消化性でんぷんが、善玉菌である乳酸菌の増加に直接的に役立つことだという。
柑橘類の例のように、単体の成分の働きをみた場合と、食品として栄養成分を組み合わせで摂取した場合では、作用に違いがあるということ。今回の結果から、同じ食品成分でも、それぞれの食品中に含まれる別の成分によって影響を受け、腸内細菌に対して異なる効果を持つことが示されたため、今後の研究では食事ではなく、個々の化合物に着目する必要があるのでは?
また、ヘルシーなイメージがあまりなかった「白パン」にも、健康に役立つ作用があるのではないかという点は、ガイドも意外でした。難消化でんぷんについては、過去の記事「広がる食物繊維の仲間と役割」をご参考にしてください。
現代は、随分様々な栄養成分の働きについて明らかになったと思いますが、まだまだ明確ではないことも多いということを改めて考えさせられました。
今回の研究では人数も少ないですし、またスペインでの研究ですから日本人にあてはめた場合には、どうなのかはわかりません。以前の記事「栄養成分を活かす! 日本人ならではの腸内細菌力」でも書きましたが、長い食習慣の歴史から腸内細菌の働きにも民族間では違いがあります。
情報は鵜呑みせず、自分の身体の声を聞いて
糖尿病などで食事治療が必要な人にとっては、GI値で判断されることは、一つの目安としてわかりやすいと思います。しかし情報が溢れる今の時代に、健康な人が、食品のある一面だけをみて、判断するのは、リスクもあると感じています。というのは、知人の中にも健康食を実践していると思っていても、栄養が偏って体調を崩す人もいました。ガイド自身も、何年も前に食養生の勉強をしていた頃は、「白い食品」を避けたりしていました。また今でも便秘がちな体質なので主食は玄米にしています。玄米は、栄養価が高く食物繊維が多いことは間違いないですが、よく噛まなければおなかをこわすこともありますし、子どもや歯の弱いお年寄りには、食べにくいこともあります。
現在ガイドは、「玄米を食べた方が身体の調子がよい」とか、「今日は胃の調子が悪いから白米に」、「お寿司にはやっぱり白いご飯がおいしい……」、というように、自分や家族の身体の様子に応じて、あるいは料理に適しているかどうかを考えて、使い分けています。
この研究報告を見て、食品の機能性は十分に明確ではないということ、また「○○がよい」という情報を鵜呑みにするのではなく、自分の身体の声を聞いて選択することの大切さを、改めて感じました。
参考/
リンク DE ダイエット(国立健康・栄養研究所)