遺伝子検査のしくみ
血液や唾液などのサンプルからDNAを解析し、その結果「がん」「生活習慣病」などの病気のかかりやすさや、「体質(太りやすさ、アルコール代謝など)」を判定・評価するDNA検査ビジネスが、米国等の海外企業やベンチャー企業を中心に急速に発展しています。これは、シーケンサーとよばれる、DNAの解析機器が昔よりも安価で高性能になったことで、ヒトのゲノムを読む研究が急速に広がってきたためです。このように身近になりつつあるDNA解析について、簡単にその方法を説明していきます。
非常に長いDNAは切断し、短くコピーされ、短い順に並べられます。一番しっぽのDNAタンパクの種類を読むことで、全体のDNA配列が分かるというトランプのカードマジックみたいな方法で読み取られます。(クリックで拡大)
まず分析の対象となるDNAですが、人間の場合その数は約30億個あります。30億個といってもイメージが湧かないと思いますので、たとえばDNA1個が仮に1mm だったとすれば、その長さは北海道から沖縄までの約3000kmもの長さになると考えてみてください(DNA本来の大きさは直径2nm(=0.000002mm)なので小さな細胞のなかに納めることができるのですが)。
こんな膨大な長さと情報を持つ紐状のDNAは、そのままでは当然分析できません。まず、適当な大きさのサイズに切断します。この切断には酵素や物理的な力を使います。この切断作業が大変に時間がかかる作業です。
適当な長さに切ったDNAを、今度は読み取るための発光タンパクがついた鋳型でコピーします。そして出来たコピーを長さの短い順に並べ、発光タンパクで識別されたしっぽのDNAタンパク(TCGA)を読み取れば、もとの配列がわかります。実はDNAは微小電気をおびているので、プラスとマイナスの電気をかけると動くのです。短いほど動く速さが早くなるのでその性質を利用して調べています。
この一連のDNA解析の高速化と低コスト化には、読み取った膨大なDNA情報の解析に用いるコンピュータの高速度計算化が大きく貢献しています。また、非常に手間がかかるDNAの切断も、刃がクリスマスツリーのように膨大に密集した「ナノクリスマスツリー」切断刀(名古屋大学が発見)で、数秒で分離することが将来可能になるかもしれません。
遺伝子検査ビジネスとは?
遺伝子検査ビジネスが急速に発展したことにより、インターネットやお店で買って受けられる検査が色々と出てきています。体質検査、肥満検査、アルコール代謝の検査、病気のかかりやすさ、病気にかかるリスクなど、インターネットで検索すれば数多くヒットします。たとえば将来の疾患リスクの検査は、他受験者などの平均値と比較した場合の相対的なリスクを高・中・低等のレベル又は倍数等で報告されたりします。しかし、悪い結果が出ても悲観しすぎないほうがよさそうです。
なぜなら、ヒトの個性や遺伝子疾患などは研究によって急速に解明されつつありますが、現状ではまだわからないことがたくさんあるためです。また、ライフスタイルや環境によって、遺伝子自体が機能発現を変化させる事例すらあるようです。
なによりも、遺伝情報は極めて大切に扱うべきものです。DNAそのものに関心を持って正しく理解し、今後ますます発展していくDNA検査と上手に付き合っていきたいですね。
参考
平成25年度委託調査報告書(遺伝子検査ビジネスに関する調査)
経済産業省
ゲノム解析とは?
独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター
ナノクリスマスツリーでDNAを数秒解析、瞬時に遺伝子診断を実現
名古屋大学