従来の作品とは一味も二味も違う
「アナと雪の女王」の驚異的大ヒットのニュースに隠れてしまった感もありますが、劇団ひとりの初監督作品「青天の霹靂」が、口コミ等で評判を呼び、着実に動員数を伸ばしています。主演の大泉洋、ヒロインの柴崎コウも、年末の賞レースにノミネート確実と噂されてるようです。この映画のキャッチコピーは「笑いとたぶん一粒の涙」ですが、笑って泣けるといえば、日本映画の古くからの常套手段の一つ。しかし従来の作品と比べて「青天の霹靂」は、笑わせどころや泣かせどころが一味違うように感じられました。
すべてのルーツはチャップリン
笑って泣ける映画の代表というと、やはりチャップリンの作品を思い出します。中でも「街の灯」「キッド」「ライムライト」は笑って泣ける名作中の名作。そして驚くべきことに、日本の笑って泣ける映画の大部分は、この3本を下敷きにしているといっても過言ではありません。と言っても、パクリとかひょう窃ではなく、原典を尊重した上でのアレンジで、最も成功した例が、御存知「男はつらいよ」シリーズです。主人公の寅次郎は、世間の道から外れた放浪紳士という原型モデルに、下町の雰囲気をふんだんに盛り込んで、見事なアレンジを施した人物設定です。
ちなみに第15作「男はつらいよ 寅次郎相合傘」の中には“メロン騒動”と呼ばれる、まさに笑って泣ける名シーンがあり、これだけはチャップリンにはないオリジナルギャグかと。