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「青天の霹靂」は笑って泣けるニューウェイブ作品

昔から日本には、喜劇、悲劇に加えて「笑って泣ける」というジャンルがありました。人情劇と呼ばれたりしますが、はっきり言ってパターンは決まってました。そのジャンルに果敢に挑み、見事に成功を収めた作品。それが劇団ひとり監督の「青天の霹靂」なのです。

広川 峯啓

執筆者:広川 峯啓

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従来の作品とは一味も二味も違う

「アナと雪の女王」の驚異的大ヒットのニュースに隠れてしまった感もありますが、劇団ひとりの初監督作品「青天の霹靂」が、口コミ等で評判を呼び、着実に動員数を伸ばしています。主演の大泉洋、ヒロインの柴崎コウも、年末の賞レースにノミネート確実と噂されてるようです。

この映画のキャッチコピーは「笑いとたぶん一粒の涙」ですが、笑って泣けるといえば、日本映画の古くからの常套手段の一つ。しかし従来の作品と比べて「青天の霹靂」は、笑わせどころや泣かせどころが一味違うように感じられました。

すべてのルーツはチャップリン

笑って泣ける映画の代表というと、やはりチャップリンの作品を思い出します。中でも「街の灯」「キッド」「ライムライト」は笑って泣ける名作中の名作。そして驚くべきことに、日本の笑って泣ける映画の大部分は、この3本を下敷きにしているといっても過言ではありません。

と言っても、パクリとかひょう窃ではなく、原典を尊重した上でのアレンジで、最も成功した例が、御存知「男はつらいよ」シリーズです。主人公の寅次郎は、世間の道から外れた放浪紳士という原型モデルに、下町の雰囲気をふんだんに盛り込んで、見事なアレンジを施した人物設定です。

ちなみに第15作「男はつらいよ 寅次郎相合傘」の中には“メロン騒動”と呼ばれる、まさに笑って泣ける名シーンがあり、これだけはチャップリンにはないオリジナルギャグかと。
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