「風致地区」と聞いたときに、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。一般的に住環境が良いとされるのは第1種低層住居専用地域ですが、それ以上に厳しい制限を課せられるのが風致地区です。
日常生活の中で自宅から最寄り駅やスーパーまでの間を歩いていても、あるいは車を運転して幹線通りを走っていても、風致地区の住宅を目にすることはほとんどなく、一般の人にとってはなかなか馴染みが薄いでしょう。
あちこちの住宅地を歩くのが「趣味」、じゃなくて「仕事」の不動産関係者でなければ、風致地区の住宅を見たことがないという人も多いだろうと思います。
しかし、国土交通省のまとめ(平成22年3月31日現在)によれば、風致地区に指定されているのは全国で747地区、16万9,598ヘクタールにのぼります。
都道府県別の指定数は神奈川県の48地区が最も多く、次いで静岡県と愛知県の44地区です。ちなみに、青森県と高知県では1か所も指定されていません。
また、風致地区の指定面積は京都府の19,295ヘクタール、神奈川県の15,003ヘクタールなどが広く、都市別では京都市の17,938ヘクタール、北九州市の12,870ヘクタール、神戸市の9,216ヘクタール、熱海市の5,171ヘクタールなどといった順になっています。
東京23区内でも14地区、2,669ヘクタールが風致地区に指定されており、決して地方都市や観光都市の住宅地に特有なものというわけではありません。
上の写真の住宅地では、建ぺい率が30%、建物の高さが8メートルまでに制限されているほか、道路面からは3メートル、隣地境界線からは1.5メートル以上の間隔を空けて建てなければならないことになっています。そのため、隣家との間は少なくとも3メートルが確保されます。
実際にはそれ以上に道路や隣家との間隔を空けた住宅が多く、風致地区内では一般的な都市部の住宅地のように建物が密集することはありません。3階建ての住宅が建てられることもなく、空もたいへん広く感じられることでしょう。
さらに、この住宅地では植栽による景観配慮も求められており、まちなみは落ち着いた雰囲気を醸し出しています。これであと、電柱と電線がなければ申し分ないのですが……。
自治体の条例あるいは風致地区の種類によって制限の内容は異なりますが、たとえば建ぺい率が30%ということは、50坪の敷地があっても建築面積は15坪までとなります。
これを住環境向上のためのプラス要素とするか、あるいは敷地を有効利用できないマイナス要素とするかは、個人の考えかた次第です。
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