秋へ向けた重要な一戦。そこに現れた強敵
ダービーへの挑戦は幕を閉じましたが、シャドウダンサーの戦いはもちろん続きます。というのも、3歳馬たちの「三冠」と呼ばれる世代限定G1レースは、以下の三つ。4月20日:皐月賞(芝2000m、中山競馬場)
6月1日:日本ダービー(芝2400m、東京競馬場)
10月26日:菊花賞(芝3000m、京都競馬場)
そうです、最終決戦の菊花賞が10月に待ち受けているのです! 3000mという超長距離の一戦なので、シャドウダンサーが確実に目指すとは言い切れませんが、ひとまずはこのレースを意識して今後のレースを戦っていくはず。
現在シャドウダンサーは、「1000万下」というクラスに所属する条件馬。菊花賞に向けてこのクラスのレースを勝ち、少しでも賞金を加算しておく必要があります。
そして6月7日。さっそくシャドウダンサーは、1000万下クラスのレース「三木特別」に出走しました。ここを勝って夏は一休み。秋に復帰……という想定でしょう。
しかし、そのシャドウダンサーに思わぬ苦難が襲いかかりました。
「遅れてきた天才」の前で味わった、大きな挫折
京都新聞杯を1番人気で4着。普通なら、1000万下のレースに戻れば1番人気となるはず。しかし三木特別では、シャドウダンサーは2番人気となります。1番人気は……、これが、とんでもないライバルが現れました。同じく3歳馬で2戦2勝。4月末にやっとデビューしたばかりなのに、2戦とも圧勝で勝ち上がったエイシンヒカリです。まさに遅れてきた天才。戸崎騎手とふたたびコンビを組んだシャドウダンサーは、この難敵と相対することになりました。
三木特別のレース映像(シャドウダンサーは黒帽の2番。エイシンヒカリはオレンジ帽の8番)
結果は、エイシンヒカリの圧勝。恐るべきその才能をまざまざと見せつけられました。一方のシャドウダンサーは見せ場さえ作れぬ6着。ある意味、「キャリア初」と言える惨敗でした。
ただこのレース、エイシンヒカリの強さは間違いないですが、一方で、この結果から「シャドウダンサーは弱い」と判断することはできません。理由はこのレースのペースにあります。
三木特別、先頭で逃げたエイシンヒカリの作ったペースは前半1000m62.5秒。1800mのレースとしては、「超」が三つ付くほどのスローペースなのです。先ほどの京都新聞杯と比較しても、5秒近く違いますからね(コースの違いはありますが)。
前半がゆっくり進むレースは、それだけ後半のラップが早くなります。どの馬も余力が残っているためです。それを示すのが、ラスト600mのラップタイム。34秒台なら「早い」、33秒台なら「かなり早い」とされるなか、なんとエイシンヒカリのこのレースにおけるラスト600mは32.8秒。先頭の馬がこんな加速を見せたら、追いつけるわけがありません。
もちろん、エイシンヒカリのみラストが早いなら話は別ですが、他の馬も軒並み32秒後半から33秒前半のタイムを出しています。そんな中、シャドウダンサーのラスト600mは33.1秒。これもすごいタイムです。
つまりこのレースは、前半をゆっくりジョギングして、最後の600mだけ皆が全速力で走ったイメージ。そうなると、1800m全体の総合力ではなく、600mの瞬発力だけが問われます。そしてそういうレースは、後ろにいる馬にとって不利。なぜなら600mの瞬発力合戦でつく差はわずかのため、後ろから逆転するのは困難になるのです。人間だって、中距離走なら逆転できる「1秒」の差でも、200m走、100m走となればその差を縮めるのは大変です。
さらに言うと、シャドウダンサーの父ホワイトマズルは、最後の瞬発力よりレース全体で持久力を競うようなレースの方が得意な子が多い傾向。シャドウダンサーも例にもれず、600mだけの瞬発力勝負になると分が悪くなります。ですから今回の敗戦は、決して絶望するものではありません。
ただ気になるのは、シャドウダンサーのスタートの悪さ。前走の京都新聞杯も、今回の三木特別も、スタートが遅れ気味で、そのため後方のポジションになってしまっています。三木特別のようなスローペースのレースでは、後方の位置取りは致命的。そういう意味で、スタートを改善し、もっとレースの展開に左右されないようにしなければいけません。これが夏前に露呈した、シャドウダンサーの大きな課題です。
三木特別で敗れたシャドウダンサーは、いったん休養に入っています。おそらく復帰は秋になるでしょう。最後の一冠、菊花賞に向けてどのような歩みを見せるのか。もちろん、私はどこまでも追いかけます。
(リンク)
シャドウダンサー|netkeiba.com
京都新聞杯|レース結果|netkeiba.com
三木特別|レース結果|netkeiba.com