21世紀的ハイブリッド指揮者 パーヴォ・ヤルヴィの魅力
「現代を代表する指揮者と言えば?」なんて訊かれたら、好みは人それぞれですし、順位を付けられるものでもなく困ってしまいます。が、高齢すぎず、若すぎず、安定したベテランで、レパートリーが広く、誰にでも受け入れられる資質を持ち合わせている人~? ということを考えると、それは、パーヴォ・ヤルヴィでしょう。
パーヴォ・ヤルヴィは1962年生まれの現在51歳。ネーメ・ヤルヴィという今も活躍する世界的指揮者を父に持ち、弟のクリスティアンも活躍が目覚ましい世界的指揮者という大指揮者一家の長男です。
シンシナティ交響楽団やパリ管弦楽団などの首席指揮者として活躍してきましたが、世界的にその名を轟かせたのが、少数精鋭のオーケストラであるドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメンと録音したベートーヴェンの交響曲全集。
19世紀的な重厚長大な「だ、だ、だ、だ~ん」なベートーヴェンからは遠く離れ、キビキビとした理知的な精緻さを持った、なんとしなやかな筋肉のベートーヴェン! 男の僕でも惚れ惚れするような、美しくかっこいいベートーヴェン像だったのです。
※NHK交響楽団首席指揮者就任後インタビューはこちら↓
・パーヴォ・ヤルヴィ、NHK交響楽団首席指揮者、就任インタビュー
特徴は「21世紀的、力強く優美なハイブリッド演奏」
そんな彼の音楽の秘密は?現代のオーケストラは楽器の音も大きく力強いのですが繊細さに欠けなくも。そうした中、70年代後半頃より、作曲当時の楽器や奏法(ヴィブラートをかけないなど)を採用した古楽オーケストラが大きく注目され始めました。が、ともするとこちらはその音の真新しさばかりに集中がいったり、軽く感じてしまうことも。
パーヴォのベートーヴェンは、それら現代オーケストラの良さと古楽オーケストラの良さを合わせて作品の本質に向かおうとし、結果として「緻密で繊細に美しく歌うが、力強さも併せ持つ」という正にハイブリッドな演奏を極め切ったところに特徴があります。それは、そう、21世紀の新スタンダードになるもの、と言えそうなのです。