そこに”愛”がないと成立しない
――麻実さんとルヴォーさんと言えば切り離して考えられないのがtptだと思います。ルヴォーさんの演出ではありませんでしたが、tptの流れを汲んで上演された3月の『おそるべき親たち』は本当に素晴らしかったです。
麻実
『おそるべき親たち』、今年3月の芸劇は再演だったのですが、2010年の初演で初めてtptグループの先輩ともいえる佐藤オリエさんと共演できたんです。オリエさんの舞台はずっと拝見していて、何て素敵な女優さんなんだろう、いつかご一緒出来たら、と思っていましたので本当に嬉しかったですね。性格もとてもたおやかで穏やか……童女のような可愛らしさをお持ちで素敵な方なんです。
私たちは姉妹を演じたのですが、彼女の事を本当の姉のように慕っていましたね。ああいう激しい……闘いの様なシチュエーションでお互い役を演じる時は絶対にそこに”愛”がないと成立しないんです。その”愛”がベースにあって初めて安心してぶつかり合える訳で。でも『おそるべき親たち』に関してはオリエさんとの間に愛を無理に育もうとしなくても、彼女と一緒に演じられることがただ幸せで最初から愛に満ち溢れている現場でした。
――芸劇での千秋楽、カーテンコールでお二人が手を繋ぐでも縦に並ぶのでもなく、横一列に肩を組み合って舞台から去る姿が印象的でした。まさに戦友と言うか、同志と言うか…。同志、と言えば麻実さんは宝塚の雪組トップスターとして活躍されていましたが、同期の皆さんと”昔の日々”について語る事はありますか?
麻実
昔の日々!宝塚の仲間とは同期会もありますし、公演の時は観に来てくれたりもします。公演中は楽屋でわあわあ喋って終わる事が殆どですが、やっぱり彼女たちと”昔の日々”について語り出すとすぐにその時代の自分に戻れるんですよね。皆それなりに年を重ねてはいるんですが、一瞬でそれこそ宝塚の大浴場で背中を流し合った時代にすぐ帰れます。私にとって宝塚の同期生って言うのはかけがえのない宝物……もう1つの家族みたいな存在です。
常にどこか緊張感を持ち、背筋を伸ばして日々を生きる事が
素敵なエイジングの秘訣
――麻実さん=カッコ良い大人の女性、というイメージがとても強いのですが、素敵に年を重ねて行く秘訣があったらこっそり教えて下さい。
麻実
……素敵に年なんて重ねてないですよ(笑)。無我夢中に生きてきたら今日(こんにち)に至ってしまったという……。でも……そうですね、実は私、女優と言う道は自分で選んだものではないんです。何度も芸能の道から降りようとして、その度に何かの力で引き戻されて……。そんな中、ある時期から10年ほど外国の演出家と多く仕事をしたんですね。今回のデヴィッド・ルヴォーもそうですし、ジャイルス・ブロック、ロバート・アラン・アッカーマン……それから日本の演出家とも沢山のご縁が出来、多くの素敵な作品や役柄に巡り会いました。
役で言うとエリザベス1世やメアリー・スチュアート、イサドラ・ダンカン、サラ・ベルナール……そんな実在の人物を演じる内に、その女性達の人生がいつの間にか自分の中に沁み込んできたのかな、という感覚はあります。作品によって自分の人生の一部が支えられてきたという事なのかもしれません。なので絶対に安易に作品を選びたくないですね。
私は仕事柄、常に厳しい状況の中で自分と向き合わざるを得ないのですが、例えば主婦だって本当に大変な仕事だと思うんです。1日の中で家事のスケジュールを組み立て、子供を育てて家の中の幸せを育んでいく。日々の生活の中でどこか緊張感を持ち続ける事が自分の足で立つ、背筋を伸ばして生きて行くという凛としたエイジングには必要なのかもしれません。
(撮影:演劇ガイド・上村由紀子)
宝塚歌劇団を退団後、様々な舞台で貴婦人、女優、世界的ダンサー等、高貴で孤高でもあるキャラクターを演じ続けている麻実れいさん。良い意味で日本の六畳お茶の間をイメージさせず、観客を自然に非日常な世界にリードする……特別な雰囲気をまとった女優さんだと思います。
1993年に活動をスタートさせ、隅田川のほとりの倉庫を改造した小さな劇場「ベニサン・ピット」を拠点に、送り出した先鋭的・実験的な作品群で日本の演劇界に大きな旋風を巻き起こしたtpt。その中心俳優として様々な伝説の舞台に立った麻実れいさんと、メイン演出家の1人として活躍したデヴィッド・ルヴォー氏が14年振りにタッグを組む『昔の日々』。この演劇的ニュースに胸を躍らせている方も多いのではないでしょうか。(ガイドも勿論その1人です。)
是非この”演劇的ニュース”が劇場で立体化される瞬間をあなたも目撃して下さい。(次ページに舞台写真追記)
昔の日々
2014年6月6日(金) ~ 6月15日(日) 日生劇場
2014年6月19日(木) ~ 6月22日(日) 梅田芸術劇場・シアタードラマシティ
作 ハロルド・ピンター 演出 デヴィッド・ルヴォー
出演 堀部圭亮 若村麻由美 麻実れい
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