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AKB商法を見直す時期が来たのかもしれない(2ページ目)

AKB48の握手会でメンバー2名が襲われる事件が起きた。命にかかわるものでなかったのが何より幸いだが、今はストーカー事件などがあとを絶たない時代。アイドルとファンが直接会うことに対する危険性については以前から指摘されてきたが、AKB48はこうしたイベントへの参加券や選抜総選挙の投票券目当てにCD売り上げを伸ばしてきたのも事実。AKB商法と呼ばれるビジネスモデルにも見直すべき時が来たのかもしれない。

松井 政就

執筆者:松井 政就

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ファンとアイドルとの関係の変化

だが、そう言われてもどこか腑に落ちない。応援するのはこちら側の自由で、応援しても具体的なものは返ってこないのがアイドルの追っかけの本質だ。あくまであこがれの対象としての絵に描いた餅であるのがアイドルだ。

少なくともAKB以前はそうだった。しかしAKB以降にとてつもない変化が生じた。「会いに行けるアイドル」となったからだ。

そうなるとファンとアイドルの関係だったものが少し変質し、「片思いの恋愛関係」に近いものになる。

世の中には互いが対等でない恋愛がある。片方が一方的にお金や愛情を与えるものだが、そうした関係は一度できあがると変えるのは難しい。与える側は、自分がそうまでして相手に尽くすのは、相手にそれだけの価値があるからだと、自分の行動を無意識に正当化するからだ。


苦労すればするほどAKBを好きになるメカニズム

以前、作家の高橋源一郎さんがこんな心理実験を紹介していた。参加者を二つのグループに分け、片方には2000円程度のバイト代を払って簡単な作業をさせ、一方にはタダで同じ作業をさせる。お互いに別のグループの条件は知らされていない。

その結果、バイト代をもらって作業したグループは「値段に見合わない」「退屈だ」と答えた人が多かったのに対し、タダで作業をしたグループでは「楽しかった」「意外に勉強になった」と答えた人が多かったのだ。(※細かい数字は異なるかもしれないが、実験の内容は概ね以上のもの)

つまり無償で行う行為には、それが有意義だからやっているのだと、自らの行為を無意識に正当化する働きが生まれるというのだ。

それと同じメカニズムにより、生活を切り詰め、なけなしの金をつぎ込み、苦労してCD(=投票券や握手券)を買えば買うほどAKBへの愛情が深まっていくスパイラルができあがる。こうなれば、あとは放っておいてもCDは売れる。


ビジネスモデルを見直す時期が来たのかもしれない

こうした商法の特徴は、応援するために多額のお金がかかる点だ。アイドルの追っかけにはお金がかかるのが常とはいえAKB商法の場合はちょっとお金がかかり過ぎる。

こうした仕組みについて、メンバーには何の責任もないのは言うまでもない。

もう一度繰り返す。
彼女らには何の責任もない。


しかし華やかなスポットライトを浴びて立つステージは、大人が作った危ない橋の上に置かれていたことに、今回の事件で感づいたメンバーもいるのではないかと、想像するのである。
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