おいしさと温かい気持ちを動物たちと分け合う『ふんふんなんだかいいにおい』
朝ごはんに食べた目玉焼きと、パンに塗ったイチゴジャムと、鶏のスープのにおいを振りまきながら、何かのために急いで野原に向けて駆けていく「さっちゃん」。そのにおいに「ふんふんなんだかいいにおい」と鼻をひくつかせた3匹の動物たちが、さっちゃんのおうちに押しかけます。動物たちと、子どもらしいちょっぴりやんちゃなかけ合いをする小さなさっちゃん。自分の大切なものを、新しい友達となる動物たちにおすそ分けする、おいしいにおいと温かな気持ちがほんのり伝わってくる絵本です。
さっちゃんと動物たちとの愉快なかけ合い
野原に向かって駆けていく途中で出会う、きつね、くま、おおかみの子どもたちに、「おまえはめだまやきだな」「おまえはいちごジャムだな」「おまえはとりのスープだな」などと言われてとおせんぼされるさっちゃん。さっちゃんのお決まりのセリフは「いーだ」。しかし、「いーだ。私はとっても急いでいるんだからどいてよ!」 とあしらうだけでなく、「あたしのおうちに いってごらん」と言葉を添えます。おうちに向かう動物たちを背にさっちゃんが野原に向かって急いだわけは、一体何だったのでしょうか!?さっちゃんが大切にしているもの
さっちゃんが野原で大事な用事を終えておうちに帰ると、ちょっと困惑気味のお母さんがドアを開けます。部屋の中には、狙っていた目玉焼きもいちごジャムも鶏のスープも、やりたい放題という感じで味わい尽くした動物たちが……。あらあら、といった表情であきれ返りながらも、さっちゃんには、そんなこともおかまいなくさせるミッションがありました。大好きなお母さんにお誕生日のお花をプレゼントし、お母さんに抱っこされ、行儀の悪い動物たちをよそに、すっかり2人の世界! そんな2人の様子を見て、おなかも既に満たされた動物たちは、自分たちもお母さんが恋しくなって帰り始めるのですが……。1匹だけ泣き出した動物がいました。その子には、お母さんがいないのでした。さっちゃんがその子の両手を握りながらかけた言葉によって、その子は元気になって帰っていきました。さっちゃんとお母さんと、大事な約束をして……。
お母さんの心の余裕がさっちゃんの大らかさとのびやかさとなり、周囲にも波及していく様子が少しまぶしく思えます。子育てで忙しい毎日の中で、気持ちをホッとさせてくれる絵本。幼児期のお子さんと一緒に、のんびりとした気持ちで楽しんでください。