廃業、老齢、事業廃止…受け取る理由で共済金の種類が変わる
共済金の受け取り方と金額について、個人事業主を例にみていきましょう。小規模企業共済では、共済金を受け取る理由によって、共済金の種類と額が異なります。
●廃業した場合、契約者が死亡した場合:「共済金A」
廃業した場合でも、特定の要件に該当すれば、共済金を受け取らずに契約を続けることも可能。契約者死亡時には、小規模企業共済が定める受給権順位(配偶者、子、父母、孫、祖父母…など)にしたがって請求
●事業を続けながら老齢給付を受ける場合:「共済金B」
満65歳以上で掛金の払込みが180カ月以上の場合に請求できる
●配偶者や子に事業を譲渡した場合など:「準共済金」
掛金納付月数が12カ月以上の場合(12カ月未満は掛け捨てになる)
なお、任意で解約した場合、また掛金を12カ月以上滞納して解約扱いとなった場合などは、共済金ではなく「解約手当金」が支払われます。
共済金の種類によって金額が異なる
共済金は、掛金月額と納付月数に応じた「基本共済金」のほか、毎年度の運用収入等に応じて経済産業大臣が毎年定める率により算定される「付加共済金」が上乗せされることがあります。付加共済金は配当金のようなもので、掛金の運用状況によっては支払われず、14年度の付加共済金はゼロです。基本共済金の例は表のとおりです。
たとえば月額1万円を20年間納付した場合……
・掛金の合計は240万円
・共済金Aに該当する場合は約279万円
・共済金Bなら約266万円
・準共済金では約242万円
となります。
なお、予定利率(掛金を運用することで得られる運用収入の見込み)は、1989年4月には6.6%から4.0%に、93年4月からは2.5%に、97年4月からは1%に変更されています。
変更前に加入した人の場合、変更前に支払った掛金については変更前の予定利率で、変更後に支払う掛金については、変更後の予定利率で共済金が計算されることになります。
任意で解約した場合の解約手当金は、掛金合計額の80~120%相当額です。掛金納付月数によって異なり、掛金納付月数が12カ月以上84カ月未満では80%、以後6カ月単位で支給率が段階的に増加しますが、240カ月未満では、基本共済金の額が掛金合計額を下回ります。
節税効果を考えれば一概に損とはいえませんが、年齢や将来のプランをふまえ、20年以内に解約する可能性がないかを慎重に考えたいところです。
一括のほか、分割でも受け取れる
共済金は廃業時などに「一括受取」ができるほか、「10年か15年での分割受取(3カ月ごと)」、「一括と分割の併用受取」から選べます。たとえば掛金月額3万円、納付年数15年、共済金Aの場合は……
・一括受取の場合 603万3000円
・10年分割受取の場合 受取総額634万6720円(3カ月ごとに15万8668円)
・15年分割受取の場合 受取総額651万5640円(3カ月ごとに10万8594円)
となります。
分割受取の金額が一括受取より多いのは、全額を受け取るまでの間、運用が続けられ、運用によって共済金が増えていくためです。年金感覚で受け取る、というのもいいでしょう。
老後のために資金として準備しながら、苦しいときには掛金の減額や納付停止ができ、いざとなれば借り入れもできる。そういった特性をふまえ、老後資金作りの選択肢に加えたいものです。