目で明るさをコントロールしている
目には眼球内に入る光量を調整する、虹彩があります。カメラでいえば絞りのようなものです。目に入る光の量が多すぎると、眼球内でハレーションを起こし、却ってものが見えにくくなるため、それを防ぐために虹彩の働きで瞳孔が小さくなり、網膜に到達する光の量を自動調整し、更に網膜の細胞の働きで適切に空間や形、色が見えるよう、脳にその情報を伝えます。逆に暗すぎる空間では瞳孔が大きくなって、光をより多く入るようにして調整されます。
しかし、急激な照度変化やまぶしい光が目に入ると、目はすぐに適応することができず、瞬間的にそれがストレスになります。そのような光体験の蓄積が眼精疲労などの原因になるのです。(写真2)
そのため部屋から部屋に移動する場合、隣接する空間で極端な明るさの変化を作らないことやまぶしい光が生活視点で目に入らない照明器具の選択や配灯の工夫が求められます。
屈折率の異なる光の色
一般照明用光源は赤色から青色までの光(スペクトル)をもっております。しかし、光源によってその色のバランスが異なります。自然光のように赤から青までバランスよく持っている光源が目に最もやさしい光と言えますが、バランスの悪い光源はスペクトルに幾つかの山があるものです。
後退色と進出色をご存じかと思いますが、たとえば赤と青では赤の方が飛び出てみえます。これは赤は網膜の後方で焦点を結び、逆に青は手前で結ぶからです。(図2)
図3. 主な光源の分光分布イメージ
網膜に焦点を合わせる作用は、カメラでいえばレンズになる水晶体が受け持ちます。若い人は水晶体に弾力性を持っているため、水晶体の厚みを毛様筋の働きで調整してピントを合わせます。しかし高齢になると水晶体が硬化するため、ピントの調整が難しくなります。そのための細かいものを見ようとすると、老眼鏡が必要になったり、より明るさが作業面に求められるのです。
以上は一例にすぎませんが、このように照明と視覚の関係を理解することが、よりよい照明の実現に役立つのです。
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