田植えの1日を生き生きと描く『おじいちゃんちのたうえ』
農家の田植えの1日を生き生きと丁寧に描く絵本『おじいちゃんちのたうえ』。絵本全体からみずみずしい感性が伝わってくるのは、田舎で田植えを経験した男の子の作文からできた絵本だからでしょう。絵を描いたのは、男の子のお母さんであり絵本作家の、さこももみさん。一家で協力して米作りに励む農家の様子と、親子合作の絵本が重なり合い、丁寧なものづくりが放つ輝きを感じさせてくれます。
今年はぼくも田植えを手伝う!
主人公の「ぼく」の家族は、毎年田植えの季節になると、お母さん方のおじいちゃんの家に、田植えの手伝いをしにいきます。例年は見ているだけだったのかもしれませんが、今年はぼくも手伝うことに。朝7時に目覚まし時計の音で寝ぼけ眼で起きると、既におじいちゃんとおばあちゃんは出かけた後。しっかりと朝ごはんを食べて、さあ、ぼくも出動です! 自分がやってみて初めて分かった一輪車での苗運びの重さ、まっすぐ速く進むことの難しさ。おじいちゃんが田んぼの土をならす作業や、機械で植えられないところをおばあちゃんが手作業で植えていく作業などが、ぼくの脳裏に鮮やかに残っていきます。子どもの目がとらえる田植えの主役と脇役たち
おじいちゃんとおばあちゃんの田植え作業を手伝う中、ぼくは田んぼに住む生き物たちの生き生きとした姿に目を輝かせます。田んぼのほとりでお昼に食べる、お母さんが握ったおむすびは、正におじちゃんとおばあちゃんのお米で作ったおむすび。田植え作業が進むのと並行して、120箱もの苗の空き箱を洗い続けるお母さん。家族みんなが協力して作業をする楽しげな雰囲気の中に、子どもの目がとらえた農作業の苦労も描かれています。そしてここに描かれていない色々な作業も積み重なって、お米が出来上がり、そのお米が大勢の人に食べられて消えていくということを、ぼくは1日の中で感じたのではないでしょうか。作者のさこももみさんが後書きで、田植えの季節の里山の輝きについて触れています。人間も動物も植物も生き生きと活動する季節の輝きを、ぼくの目は鋭くとらえていました。ぼくは来年もきっと、表情を輝かせておじちゃんの家の田植え作業を手伝うのでしょうね! 読み終わるときっと、豊かな自然の中で思いっきり深呼吸をしたくなるでしょう。