建築の規定には紛らわしい用語がいくつもありますが、そのなかで住宅購入者も知っておいたほうがよいのは「構造耐力上主要な部分」と「主要構造部」の違いです。
「構造耐力上主要な部分」とは、建築物の自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧、水圧、地震などの震動、衝撃に対して建物を支えるものを指し、建築基準法施行令第1条1項3号で用語の定義がされています。
それに対して「主要構造部」とは、火災時の倒壊防止や延焼防止などを視野に入れたもので、建物の規模や用途に応じてさまざまな制限が加えられます。建築基準法第2条1項5号に用語の定義がありますが、主に防火上の観点から一定のものが除かれます。
【構造耐力上主要な部分】
基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材など)、床版、屋根版、横架材(はり、けたなど)
【主要構造部】
壁(間仕切壁を除く)
柱(間柱、付け柱を除く)
床(揚げ床、最下階の床、廻り舞台の床を除く)
はり(小ばりを除く)
屋根(ひさしを除く)
階段(局部的な小階段、屋外階段を除く)
これを見て違いにすぐ気がつく人もいるでしょうが、「構造耐力上主要な部分」に階段は含まれていません。その一方で、「主要構造部」には建物の基礎が含まれていません。
また、「主要構造部」は最下階の床が除かれていることにも注意が必要です。2階建ての一戸建て住宅であれば1階の床、平屋建ての住宅であれば床のすべてが対象外です。
そして、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)によって、新築住宅の売主などに10年間の瑕疵担保責任が課せられているのは、「構造耐力上主要な部分」および「雨水の浸入を防止する部分」ですから、階段は法的な保証義務の範囲に含まれないことになります。
中古住宅で個人が売主となる場合には、瑕疵担保責任(欠陥があったときの保証など)の範囲や期間を任意で定めることができます。
このとき、対象範囲について「建物構造上主要な部位の木部の腐食」などのように、建築基準法で定義された用語とは違う表現が使われることも少なくありません。
そのため、保証対象の解釈が人によって異なるなど、契約内容が曖昧になりがちな面も否めないでしょう。対象範囲が「構造耐力上主要な部分」なのか、「主要構造部」なのか、あるいは「建物構造上主要な部位」はどこまでなのか、しっかりと確認しておくことも必要です。
購入した住宅に何ら欠陥などがなければ、誰も気にしないままでやり過ごされてしまうような違いなのですが……。
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