はじめに
行政書士試験が年々難しくになるにつれ、受講生や受験生から、法律書の紹介を頼まれることが多くなりました。各科目の基本書のご紹介は以前にしているので、今回は最近出版された本の中から、行政書士試験に有益と思われる民法の本をご紹介したいと思います。『ハイブリッド民法1 民法総則(第二版)』
ご紹介したい本は『ハイブリッド民法1 民法総則(第二版)』です。平成26年4月に第2版が出版されました。これまで、法学部で使うスタンダードな教科書は有斐閣『Sシリーズ民法』でした。法律書出版の老舗である有斐閣Sシリーズと比べると、このシリーズの知名度はそれほど高くないかもしれません。だからこそ、紹介したいと思いました。良い本だからです。
旧版についての評価ですが、ネット上で、司法試験受験生が「短時間で民法をまわすのに最適だ」と評価をしているのを散見します。行政書士試験講師の立場から申し上げると、この本は行政書士試験にも最適だと思います
ではこの本のどこが素晴らしいのでしょうか。簡単に言えば、教育的配慮が行き届いている点です。以下、主だった例を挙げていきたいと思います。あわせて、この本を行政書士試験用にカスタマイズする方法についてもご紹介したいと思います。
本書の構成と行政書士試験
どんな本も漫然と読むだけでは身につきません。
そこで、基本事項を説明する本文とは別に、レベルに応じて、Case, Topic, Further Lesson, Exam, Hybrid Examと詳細に書き分けるという教育的配慮がなされています。
この構成を行政書士試験のレベルに合わせてカスタマイズするならば、演習問題であるExam, Hybrid Examは不要だと思います。また、コラム的要素のあるTopicも試験と直接関係するものは限られており、必要なものだけを読めばいいと思います(必要なTopicは、2-1、2-4、7-1、7-4、7-5、10-4、10-6です)。
一方、Caseは主に典型例をあげています。これは本文の一要素であり必要です。また、Further Lessonは、本文と比べると高度な内容ですが、行政書士試験の出題が見込まれるものは読むべきだと思います(出題が見込まれるFurther Lessonは、5-1、6-3、6-6、7-1、8-1、8-2、9-2、10-3、10-4、10-5です)。
このようにレベルごとに書き分けるという教育的配慮がなされているので、他の類書と比べて、行政書士試験用のテキストとして格段に使いやすいと思います。