建築家と建築士って同じなの?
「建築」という日本語は、実はそんなに古くありません。江戸末期(明治期説もあります)に英語のArchitecture(アーキテクチャー)の訳語としてつくられたもので、最初は「造家(ぞうか)」ともいわれていました。この「造家」の方が住宅の場合などはピッタリくる場合も多い気もしますね。でも今では完全に死語です。建築をつくる(設計する)する人は「建築家」と呼ばれています。この建築家もArchitect(アーキテクト)の訳語として広く使われていますが、その定義は曖昧……。そこで、天下の「広辞苑」を、ひも解いてみることにしました。広辞苑によると(ってなんか権威的ですが……)、「【建築家】建築物の設計・監理を職業とする人。」建築家に対する説明はこれだけです。対して建築士は「【建築士】建築士法所定の国家試験により免許を受け、設計・工事監理などの業務を行う技術者。国土交通大臣の免許を受ける一級建築士と、都道府県知事の免許を受ける二級建築士・木造建築士がある。」とされています。
つまり「建築家」には資格はいらず、「芸術家」「音楽家」あるいは「漫画家」といった職業の呼称と同じもののようです。「建築士」は「司法書士」「税理士」とか「気象予報士」といった一般に「士業(しぎょう)」と呼ばれる有資格者のことを指すように感じられますね(あくまで「広辞苑によると」……ですが」)。
さらに、「建築家」「建築士」それぞれの団体について調べてみました。日本の建築家の団体で一番上にくるものは、「公益社団法人日本建築家協会」(JIA)。JIAのサイトでは、
とあります。「同等の資質」が、」ちょっと引っかかりますが……。ちなみに初代会長は丹下健三先生です!(社)日本建築家協会は、「建築士(国が定めた建築技術者の資格)もしくは同等の資質を持つ者」の中で、設計、監理サービスを提供し(建築士には様々な専門的職業に従事する人がおり、設計、監理は事実上その一分野となっています。)、当協会の倫理規定や、継続教育などの規定を遵守することに同意した人たちを会員とする職能団体です。
建築士の団体としては、「公益社団法人日本建築士連合会」(Japan Federation of Architects Associations)があります。こちらの設立は1952年。同サイトでは
(日本建築士連合会webサイト「建築士とは」より抜粋)建築士は、「建築士法」に定められた資格をもって、建物の設計・工事監理を行う建築のプロフェッショナルです。建築士は、一級、ニ級、木造の3つの資格にわかれており、建物の規模、用途、構造に応じて、取り扱うことのできる業務範囲が定められています。この資格は、国家(知事)試験により国や都道府県から与えられたものです。
日本建築家協会(JIA)は、サイトによると
(JIAサイト「建築家協会の歴史」より抜粋)戦後、昭和25年(1950年)に建築士法が制定されました。1947年に日本建築設計監理協会、そして1955年の世界建築家連合への加盟に伴い、翌56年に改組・改名して日本建築家協会となりました。その後日本建築設計監理協会連合会と合併し、1987年新日本建築家協会として再スタートを切り、それが現在のJIAとなります。1996年に名称を日本建築家協会と変更し、現在に至っています。2013年4月、公益社団法人に移行しました。
ちょっと調べただけでわかったことは、JIAでは建築家を「建築士(国が定めた建築技術者の資格)もしくは同等の資質を持つ者」と、日本の国家資格にこだわってないこと、日本建築士連合会では「建築家」というコトバを使わずに一貫して「建築士」という表現をしていることです(しかし英語表記のJapan Federation of Architects Associations」にはArchitectsが入っていますが……。
このように、「建築家」と「建築士」は、日本では混乱があるように感じられます。英語圏のArchitectに該当する職業の名称が定まっていないよう……。ちなみにグーグル翻訳では「Architect」と入力すると、ドーンと「建築家」と表示されます。
もし、これから家を建てる方で、建築家さんとお話する機会があったら、一度「建築家の定義」について聞いてみるとよいでしょう。「一級建築士でなければならない」という人もいれば「受賞暦があったり有名な建築関連雑誌に載ったことのあるひと」「実務経験の長さ」とか解釈はいろいろだと思われます。
もちろん、建物は意匠(デザイン)だけでなく、構造設計者、設備設計者などのエンジニア系、インテリアデザイン、ランドスケープ、施工会社……などさまざまな要素や職種で成り立っています。以下は10年以上前に私が、この建築業界(?)を島にたとえて描いてみた絵です。