ディスカバリーツアーで街を『発見』
まち暮らし不動産(西国分寺その他中央線沿線)
街を歩きながら物件を見学するという、これまでにないやり方で賃貸の仲介を手がけている会社がある。その名もまち暮らし不動産。2013年5月にお試しで始めて以来、2014年4月までに中央線・武蔵野線西国分寺、南武線谷保、中央線阿佐ヶ谷などで計20回のディスカバリーツアーを実施している。私も4月の西国分寺から西武国分寺線恋ヶ窪へのツアーに参加、街と物件を見てきた。
ツアーの集合地点は西国分寺駅改札。そこで連絡の行き違いから私ともう一人が30分早く集合してしまったことが判明、急遽、駅近くにある多世代シェアハウスとして有名な物件「マージュ西国分寺」を見せてもらうことに。この日、案内してくださるまち暮らし不動産の篠原靖弘さんは地元西国分寺で自宅の1階を地域に開放した西国図書室を主催している人で、地域には知り合いが多く、だからこその時間潰し。私としては以前から見てみたかった物件を見せていただき、行き違い万歳と言いたいほどだった。
そうこうするうちに参加者が集合。今回は関係者も入れて8人である。これまでの例では数人から10人くらいが多いそうで、約2時間をかけて3物件を見学、最後に30分ほど意見交換をする予定だという。普通の散歩はいわゆる名所旧跡を歩くが、このツアーが尋ねるのは延々住宅街。街の住み心地を知るためのツアーなのである。物件については近くに行くまで情報は伏せられており、室内を見学、少し離れた場所まで行ったところで家賃あてクイズを行うというのがツアーの流れ。物件に関してはディスカバリーツアーというより、ミステリーツアーというのが正しいかも知れない。
駅近くの飲食店街の味やら価格やらの話をしながら住宅街を歩き、公園に寄り道をし、最初の物件へ。外から見ると単なる古ぼけた普通のアパートなのだが、入ってみると窓から緑の林が借景として広がり、DK、和室ともに8畳、洋室6畳という広い2DK。現地へ行ってみないと魅力は分からないだろうなと思われる物件である。
本題に戻ろう。私たちはその後、古い平屋の一戸建て、間取りを変更したと思しき2DKマンションを見学、途中でパン屋さんでティータイム、最後にまち暮らし不動産で部屋を借りたという人のオフィスで意見を言い合った。面白いと思ったのは、当然だが、同じ場所を歩いても感じることは異なる。意外に店が多いのねと思った人もいれば、寂しいと思った人もある。そうした様々な意見を聞くことで自分の好き嫌い、感じ方なども変わってくるわけで、一人で歩くのもいいが、複数で歩くことによる発見も多い。
さらに特筆すべきと思ったことは、案内してくれた篠原さんが公園で遊んでいる子ども達や電車にカメラを向けている人たちその他、街で出会う人たちに気軽に声をかけていたこと。そこに住む人と話すことで街の雰囲気が分かることもあるし、人懐っこく笑顔を向けてくる人たちがいる街なら住んでみたいとも思う。
篠原さんを含め、現在まち暮らし不動産に関わっている人たちは元々、街の中で地域に関わる活動を行ってきた人たち。デザイナー、福祉系、建築家などいろいろな人が地域づくりに関わっているが、その中に不動産会社は少ない。篠原さんたちはそれに気づいて不動産会社を始めたそうで、不動産を場として多くの人に提供することは、それ自体で地域を活性化させる仕事である。不動産会社がそれに気づいて街にもっと関わっていけば、地域は変わるのにと。最後に来てまたまた脱線だが、そう思った。
●ディスカバリーツアーへのお問い合わせは
まち暮らし不動産