永福寺跡(ようふくじあと)
~つわものどもが夢の跡
まずは、鎌倉駅東口から大塔宮行きバスに乗り、終点の大塔宮バス停で下車。着いたところが鎌倉宮ですが、瑞泉寺に向かうゆるやかな登り坂は、出かけた最初の元気なときに訪れた方が歩きやすいので、先に瑞泉寺に行くことをお勧めします。鎌倉宮の境内を通り抜け、トイレ脇の道から出たら、左にまっすぐ進んでいきましょう。やがて左手に、低い丘のある広場が見えます。ここは国指定史跡の永福寺跡。源頼朝が、義経らの菩提を弔うために、平泉の中尊寺を模して作った、永福寺がここにあったといわれています。現在、三堂の基壇が復元され、見学できるようになっています。鎌倉幕府歴代の将軍もよくここを訪れ、和歌を詠むなどして楽しんだよう。永福寺は壮麗な二階建てのお堂だったようで、これにちなんで辺りの地名が二階堂となったといわれています。
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■永福寺跡
住所: 鎌倉市二階堂178
アクセス: 大塔宮バス停から徒歩約10分
ホームページ:http://www.city.kamakura.kanagawa.jp/treasury/yohukuji_cg.html
色とりどりの花々と出会う、瑞泉寺へ至る道
永福寺跡を出たら、右手に進んでいきます。やがて、道はなだらかな登り坂に。道の脇に色とりどりのアジサイが咲き、目を楽しませてくれます。瑞泉寺山門脇の斜面にはホタルブクロという釣鐘型の白い花が咲いていることも。地元の方が、「子どものころ、この中にホタルを入れると提灯みたいに光ってきれいだったんだ」、と話していらしたことがあります。ときおり草刈される斜面などに生える、里山の植物です。
瑞泉寺に至る道の脇に咲き誇るアジサイ
瑞泉寺
~アジサイの小道と趣あるお堂、庭園
アジサイ咲く瑞泉寺の道
門をくぐって、本堂へお参りしましょう。瑞泉寺の開山は夢窓国師(疎石)。鎌倉時代に創られた後、鎌倉公方代々の菩提寺として栄え、鎌倉五山に次ぐ関東十刹に名を連ねた格式あるお寺です。本堂には、釈迦如来像・夢窓国師像などがまつられています。
お庭にはキキョウや、夏に葉が“半分お化粧したように”白くなるハンゲショウが生え、すがすがしい風情。キンシバイなどの黄色い花が緑に映え鮮やかです。
本堂前を進むと、「どこもく地蔵」のお堂があります。このお地蔵さまをお守りしていた僧が貧乏して、よそに移って生活しようとしたところ、地蔵が「どこも、どこも」と言ったので、どこへ行っても苦しいことは同じだと悟り、よそへ行くことをやめたとか。
境内奥には、開山の夢窓国師がつくったとされる、南北朝期の禅の庭園が発掘復元されています(国名勝)。夢窓国師はこの洞窟で坐禅を組み、池の水面に映る月を眺めたそう。岩壁をうがった洞窟が、池を挟んでお堂と対峙する……自然の幽玄な趣、禅の心が伝わってくる庭園です。
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■瑞泉寺
住所:鎌倉市二階堂710
アクセス:大塔宮バス停から徒歩約20分
ホームページ:http://www.kamakura-zuisenji.or.jp/
鎌倉宮~ヤマアジサイの散歩道
鎌倉宮の神苑山あじさい散歩道
この鎌倉宮(大塔宮)は、大塔宮護良(もりなが)親王を祭神とし、明治天皇が創建した神社です。鎌倉幕府の打倒に尽力した護良親王は、後に捕らえられ、足利直義(ただよし)に幽閉されて、28歳の若さでこの地で処刑されました。本殿の奥には、親王が幽閉されたという土牢があります。
すがすがしいクスノキの森を抜けていくと、親王の馬に乗った姿や一代記などが展示された宝物館があります。宝物館前の門を出て、右手にそびえる大きな木はオガタマノキ(市指定天然記念物)。秋に鈴のような形の実がなる木で、神楽鈴の起源とも。日本神話の女神・アマノウズメノミコトは、天岩戸の前でこの枝を持って神楽を舞ったとされます。
※2018年現在、境内のヤマアジサイは控えめとなっています。
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■鎌倉宮
住所:鎌倉市二階堂710
アクセス: 大塔宮バス停から徒歩約20分
ホームページ:http://www.kamakuraguu.jp/
趣ある薬師堂谷(やくしどうがやつ)を抜けて
鎌倉宮を出たら、今度は鎌倉宮バス停から奥の道へ進みます。薬師堂谷といわれる、趣ある道を歩いていきましょう。自由な詩歌を旨とする新体詩の完成者となった詩人・蒲原有明は、昭和2年ごろ、この谷戸に住みました。蒲原有明の家には、川端康成もしばらく住んでいたといいます。天園ハイキングコース覚園寺口
覚園寺(かくおんじ)
~お寺の方にご案内いただく、花咲く寺院
薬師堂谷の奥に、覚園寺があります。お寺の方が、決められた日の決められた時刻に、境内をご案内くださいます。下記DATAを参照に、ぜひ、時間を合わせて歩いてみてください。梅雨の時期は、咲き誇るアジサイに包まれるような花の道を歩くことができます。覚園寺は、鎌倉幕府第2代執権の北条義時が建てた大倉薬師堂の跡に、再び元寇が起こらないよう、第9代執権・北条貞時が心慧上人を開山として建てたお寺です。北条氏の滅亡後は、足利氏の祈願所として栄えました。
天然記念物のマキの大樹に見守られるように建つ茅葺きの本堂は、室町時代の禅宗様式が残る薬師堂(県重文)。本堂の天井に書かれた足利尊氏直筆の字を、お寺の方が見せてくださることもあります。ご本尊の薬師如来像は鎌倉屈指の巨像(国重文)。左右に薬師如来の教えを守る十二神将像が並び、壮観です。そのうち戌神将(いぬしんしょう)は、将軍実朝が公暁に討たれた鶴岡八幡宮参拝の際、白い犬の姿となって、北条義時にお供をやめるよう告げたとか。
江戸時代あった庄屋さんの家を移築したという茅葺き屋根の古民家で、仏さまにまつわるお話を拝聴しましょう。13の仏さまにお参りすることができる十三仏やぐら辺りの岩壁では、6月中旬ごろ、イワタバコが紫色の星形の花をしっとりと咲かせます。
イワタバコは、湿った岩盤などに多く生える植物で、垂れ下がるように生える葉の形がタバコの葉に似ていることが名の由来。鎌倉で見られるものの多くは、正しくは葉の裏などに毛が多く生えるケイワタバコです。丘陵の多い鎌倉では、山際を切り落とすように利用された土地が多く、切り立った岩盤などでは、山に降った水がしみだして、いつも湿っているところが多くあります。そうした場所によく見られるイワタバコは、鎌倉らしい植物のひとつといえるでしょう。
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■覚園寺
住所:鎌倉市二階堂421
アクセス: 大塔宮バス停から徒歩約10分
拝観時間:10:00、11:00、13:00、14:00、15:00(正午は土・日・祝日のみ有り)
雨天、荒天、8/1~31、12/20~1/7は拝観休止(8/10は黒地蔵縁日開催)
TEL:0467-22-1195
アジサイ咲く覚園寺
バスで鎌倉駅へ戻りましょう
覚園寺を出たら、元の道を通り大塔宮バス停へ。バスで鎌倉駅に戻りましょう。梅雨の時期、濡れた石畳や雨だれの音など、雨ならではの鎌倉の風情を味わうのも良いものです。しっとりと咲くアジサイやイワタバコに出会う散策を、楽しんでみてくださいね。瑞泉寺、鎌倉宮、覚園寺の地図