どうやって手に入れよう『ペレのあたらしいふく』
1匹のこひつじを世話しながら大きくなった男の子、ペレ。背が伸びて上着が短くなってしまったけれど、どうしよう? 買ってもらう? いいえ、「ペレのあたらしいふく」は、もっともっと素晴らしい方法によって手に入れられるのです。働くことの色々な意味、1つの物を作り上げる大変さと喜び。お金さえあれば何でも手に入るように見える世の中に、お金では買えない物がたくさんあります!
こひつじの毛がどんどん姿を変えていく
新しい上着を手に入れる出発点は、ペレと一緒に大きくなったこひつじの毛です。ペレの上着の丈が短くなる一方で、こひつじの毛はどんどん長くなっていたのですね。その毛をきれいにはさみで刈り取ったペレは、たくさんの毛の束をおばあちゃんのところに持っていきます。おばあちゃんにすいてもらったこひつじの毛は、さらにたくさんの人の手がかかることによって、糸になり、色がつき、きれになり……と姿を変えていくのです。大人も子どもも対等の関係
しかし、ペレはこひつじの毛を上着にしていくために、ただ色々な人にお願いをして回っただけではありません。おばあちゃんは毛をすいている間、ペレににんじん畑の草取りをお願いしました。もう1人のおばあちゃんは、毛を糸に紡ぐ間、ペレに、牛の番をお願いしました。そんな風に、自分の時間を割く代わりに、ペレができることを担当してもらうという形で、対等の関係が繰り返し展開されていくのです。物をやサービスをお金で買うのとは対照的に、欲しいものを得るために、たくさんの人と交流し、労働の対価として少しずつほしい物=新しい服に近づいていくペレ。とても自立した男の子ですね。新しい服が出来上がり、こひつじへ感謝の気持ち伝えにいくペレは、一回り成長したように見えます。
描かれているスウェーデンの大らかな田園風景を見ていると、この土地の風土が、分担して働き丁寧に作り上げるという気風を作り出しているのだろうかという気持ちになります。ひと手間、ふた手間かけて物事に丁寧に取り組みたくなる気持ちをもたらす絵本です。