リタ・ライス「ザ・クール・ヴォイス・オブ・リタ・ライス」より「スプリング・ウィル・ビー・ア・レイト・ディス・イヤー」
クール・ヴォイス・オブ・リタ・ライス
このリタ・ライスのアルバムは、何と言ってもアメリカの超有名ジャズバンド、アート・ブレイキー&ジャズメッセンジャーズが伴奏している事で有名な録音です。
何とも豪華な伴奏陣ですが、どの曲も、しっかり伴奏をしているのがさすがです。この曲「スプリング・ウィル・ビー・ア・レイト・ディス・イヤー」では、特にテナーサックスのアイラ・サリヴァンが良い味を出しています。
アイラ・サリヴァンは、ジャズ界でも珍しい部類に入るマルチプレイヤーです。通常、マルチプレイヤーは、サックス奏者の場合、違うサックスという場合がほとんど。
テナーであれば同じキーのソプラノ、キーは違いますが同じサックスのアルト、バリトンなど。ビッグバンドでは、同じリード楽器という観点からクラリネット、運指が似ているということでフルートも兼用でという場合が殆どです。
ところが、アイラは、テナーサックスと何とトランペットをマルチで演奏します。スウィング時代のアルトサックス奏者の名手ベニー・カーターや、フリー・ジャズでは、オーネット・コールマンがそうですが、これは珍しい組み合わせと言えます。
サックスとトランペットでは吹き方から、指使いまでまるで別物。奏法としては、全く違うからです。その上、アイラはどちらも甲乙つけがたい名手です。
ここでは、テナーサックス奏者として、太い音でハードなソロを披露します。こんな特異な才能を持ったアイラ・サリヴァンですが、ジャズ界の中ではむしろ知られていないアンダーレイテッドなミュージシャンの一人と言えます。
モダン・ジャズ期のアメリカのミュージシャンの層の厚さを感じさせるエピソードです。
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「スプリング・ウィル・ビー・ア・レイト・ディス・イヤー」と言えば
ピアノ奏者ピム・ヤコブス「カム・フライ・ウィズ・ミー」より「スプリング・ウィル・ビー・ア・レイト・ディス・イヤー」
カム・フライ・ウィズ・ミー
このアルバムは、ヨーロッパ録音のものらしく、クリアで上品、柔らかい音質が特徴です。ピムの奏でるソフトスウィングを引き立て、全曲を通してさわやかなピアノトリオが楽しめます。
それにこのアルバムは、ジャケットも秀逸。KLMの青い飛行機と、澄み切った青空がすがすがしい印象を与える、非常に趣味のよいものになっています。
「スプリング・ウィル・ビー・ア・レイト・ディス・イヤー」はスタンダードとは言えあまり有名ではない曲。夫婦ということでリタの伴奏を務めることが多いピムが、この曲を気に入り取り上げたのでしょうか。
もしくは、ピムがリタにこの曲の良さを伝えたのかもしれません。そんなちょっとした選曲にも、仲が良くおしどりで有名な二人の人柄がしのばれ、余計に音楽が良い物に聴こえてきます。
春のシーズンにピッタリなスプリング・ジャズVOL.2はいかがでしたか。まだまだ春に関するご紹介したい曲や演奏は沢山あります。それは、また次の機会ということに。それでは、次回またお会いしましょう!
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