上位を独占する新興国株ファンド
アルゼンチンペソの急落から始まった新興国ショックは、トルコ、南アフリカの通貨急落に波及し、中国ではシャドーバンキングのデフォルト(債務不履行)、さらにはウクライナ不安等々、次から次へと新興国発の悪材料が発生。一時はどうなるのかと思った新興国市場ですが、3月は一部の新興国市場の株価が急騰という意外な一面を見せました。2014年3月の投資信託の騰落率第1位は、アムンディ・ジャパンが運用する「アムンディ・インド・インフラ株式ファンド」。騰落率は唯一20%超の21.08%と、2月の第1位、大和住銀投信投資顧問が運用する「株式&通貨資源ダブルフォーカス(毎月分配型)」の13.50%を大幅にアウトパフォームしています。
第2位はイーストスプリング・インベストメンツが運用する「イーストスプリング・インド・インフラ株式ファンド」で騰落率は19.39%、第3位はHSBC投信が運用する「HSBCインド・インフラ株式オープン」で騰落率は18.54%でした。上位3本が全てインドのインフラ関連株式を投資対象とする投資信託です。
騰落率ベスト10の内、7本がインド株式、残り3本がトルコ株式に投資される投資信託というように、3月の好成績ファンドはインド、トルコの2ヵ国に集中していました。新興国ショックがあったことから一時的に新興国株が全て売られた状況でしたが、私たちがあまり気づかない水面下では新興国の物色が行われていたことになるのでしょう。
ただし、米国の金融緩和の縮小から利上げへ道が築かれつつあることから、一本調子で新興国株が上昇していくのは難しいと思われます。今後は、新興国の中でも勝ち組、負け組の濃淡が鮮明になるかもしれませんが、長期運用という視点に立てば新興国株を資産の一部に組み入れていく必要性は依然として高いと言えます。
なお、騰落率は純資産総額10億円以上、ブル・ベア型ファンド、DC(確定拠出年金)、SMA(ラップ口座)専用ファンドは除いています。
新規設定ファンドに投資資金集まる
投資資金の流入・流出額で目立ったのが、3月は流入額のベスト10に新規設定ファンドが3本入ったことです。1月、2月にランクインした新規設定ファンドは、それぞれ1本ずつでしたので、投資家の投資姿勢がリスクを取る=リスクオンに変わったことを裏づけるものだと言えるでしょう。穿った見方をすれば、投資心を揺さぶられるようなファンドが設定されなかったと言えるのかもしれませんが。ランクインした3本のファンドは、新光投信が運用する「新光シラー・ケープ米欧株式戦略ファンド(リスク・コントロール付)為替ヘッジなしコース」408億円。三井住友アセットマネジメントが運用する「日興グラビティ・ヨーロピアン・ファンド」337億円。JPモルガン・アセット・マネジメントが運用する「日興JPM日本ディスカバリー・ファンド」215億円です。久し振りに新規設定の日本株ファンドに多額の資金が流入したのは、日本株に強気と見ている投資家が多いのでしょう。
一方、流出額のトップは3月も国際投信投資顧問が運用する「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」で、404億円の投資資金の流出です。2014年に入り3ヵ月連続の400億円超えとなり、3ヵ月累計では1281億円となっています。3月末こそ純資産総額1位をかろうじてキープしましたが、翌4月1日に第1位の座をフィデリティ投信が運用する「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」に譲っています。
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドは、3月の資金流入額が607億円。2月まで6ヵ月連続1位の野村アセットマネジメントが運用する「ドイチェ高配当インフラ関連株投信(通貨選択型)米ドルコース(毎月分配型)」を抑え、資金流入額第1位となりました。3ヵ月累計で1382億円も資金流入となっているのですから、純資産総額の第1位に輝くのも時間の問題だったと言えます。
ただ、グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)も、時の経過とともに資金流出額が減少しているのは一筋の光明かもしれません。
その他、投資資金の流出でやや目立つのが、大和証券投資信託委託が運用する「ブラジル・ボンド・オープン」が3ヵ月連続100億円超えとなっています。